はじめに
令和6年度診療報酬改定に向けた議論が概ねすべて終え、告示等の発表資料が公開されています。
本記事では、令和6年度調剤診療報酬改定をより理解をする上で知っていただきたい、
改定率や改定基本方針、中医協でのこれまでの議論について、ご紹介しています。
最新の告示関連の情報については次の記事で一部解説しています。
また、記事だけでなく動画でも随時改定に関する解説動画を発信しています。
最新の動画は以下よりご覧いただけます。
関連YouTube動画
<注意点>
本記事は事実情報を中心に掲載していますが、一部筆者の見解が盛り込まれています。
また、閲覧者様の記事閲覧時に最新でない情報が掲載されていることも考えられます。
記載内容によって被った損害・損失については一切の責任を負いかねますので、
各々にて最新情報および掲載元の情報をご確認ください。
<目次>
はじめに
1.令和6年度診療報酬改定スケジュール
※2024年3月5日 更新
次期改定に向けたスケジュールは、従来の改定スケジュールと異なります。
医療DXの取組みの一環で、診療報酬改定は従来の4月施行から6月施行に変更することが決定しています。
※薬価改定は従来通り4月施行
介護報酬改定の施行時期は、イレギュラーで医療機関と密接に関わる4サービスは6月施行、その他サービスは4月施行の方針が示されました。
薬局が関わる居宅療養管理指導については、診療報酬改定と同じ6月改定の見込みです。
一方で、3月末までの検討・情報発表スケジュールは従来通りの見込みです。
筆者の予測では、2022年度の改定スケジュールと同様の前提とした場合、次のスケジュールを予測しています。
- 改定率発表【2023年12月20日(水)
22日(金)】※確定 - 公聴会【2024年1月19日(金)】※確定
- 短冊発表 【2024年1月26日(金)
24日(水)】※確定
※短冊・・・個別改定項目を記載した点数無し版 - 中医協答申 【2024年2月14日(水)
7日(水)】※確定 - 厚労省通知・説明会(動画) 【2024年3月5日(火)
1日or8日(金)】※確定 - 疑義解釈・変更通知 【2024年3月29日(金)~】※予測
※予測としているのは、あくまでも上記は2024年2月22日時点の筆者予測スケジュールです。
(参考)2022年度診療報酬改定 中医協 発表スケジュール
- 改定率発表【2021年12月24日(金)】
- 公聴会【2022年1月21日(金)】
- 短冊発表 【2022年1月26日(水)】
- 中医協答申 【2022年2月9日(水)】
- 厚労省通知・説明 【2022年3月4日(金)】
- 疑義解釈・変更通知 【2022年3月31日~】
2.改定率(令和6年度予算編成 社会保障関連)
※2023年12月25日 更新
2023年12月20日の中医協にて、改定率の発表があり、22日の閣議にて令和6年度予算案が閣議決定されました。
診療報酬本体は+0.88%となり、看護職員、リハビリ専門職等の医療関係職種の賃上げが+0.61%、その他本体改定率は+0.46%で、財源配分は従来の1:1.1:0.3が維持され、調剤は0.16%プラス改定で決着しています。
その他本体改定率には、40歳未満の従業員への賃上げ措置として+0.28%を含むとされています。
薬価については、▲0.97%となり、2022年改定に比べマイナス幅は縮小されました。
ただし、調剤については、制度改革事項として「調剤基本料等の適正化」の文言が盛り込まれています。
3.改定基本方針(社会保障審議会)
※2023年12月15日 更新
2023年12月11日に社会保障審議会より次期改定の基本方針が決定・公表されています。
後に言及する「個別改定項目」は、この基本方針に基づいた内容になる見込みで、改定の全体像を把握するのに役立ちます。
今回の基本方針における重要ポイントは、
基本認識の最初の項目に、物価高騰・賃金情報関連の内容が盛り込まれたことです。
重点課題にも、「人材確保・働き方改革等の推進」が掲げられています。
これらは、診療報酬全体を増やす動きに捉えられますが、単純な報酬増は患者負担増に直結するため、どのような対応になるのかが注目されるポイントです。
その他、次の概要資料内にて、調剤関連が盛り込まれそうなポイントを赤線を引いていますので、ご覧ください。
<元資料掲載記事>
<参考ブログ記事>
4.告示内容(中央社会保険医療協議会)
※2024年3月18日 更新
一部の点数項目については、別記事で詳しく解説しています。
薬局経営者研究会の会員企業様向けには、調剤抜粋版の施設基準関連通知をご用意しています。
詳細については、以下関連リンクをご確認ください。
5.点数別答申公開までの議論(個別改定項目)
個別改定項目について、中医協総会では様々なテーマで議論され、調剤に関連する内容も多数ございます。
本記事では、調剤報酬点数表の点数項目別に議論の内容を整理してご紹介いたします。
以下記事は、2024年1月26日の短冊発表以前の情報をまとめています。
(0)これまで議論の整理
※2024年1月12日 更新
公聴会・パブリックコメントに向けて「これまでの議論の整理案」が取りまとめられる
個別点数別の内容紹介の前に、1月12日の中医協にて発表された「令和6年度診療報酬改定に係るこれまでの議論の整理(案)」についてご紹介いたします。
例年の流れであれば、中医協答申までの間に、これまでの議論を基本方針の項目別に整理した資料が発表され、公聴会・パブリックコメントにて国民からの意見を募集されます。
この資料を読み取ると、診療報酬改定で手が加えられる可能性が高い項目を把握することができます。
短冊発表までは、本資料が公式にまとめられた確度の高い情報になりますので、合わせてご覧ください。
■薬局経営者研究会 限定コンテンツ
「令和6年度診療報酬改定に係るこれまでの議論の整理」(2024年1月12日版 調剤関連部分マーカー付き版)
※有料会員向けに、調剤関連部分にマーカーを引いた資料を公開しています。■関連ページリンク
(1)調剤基本料関連 ・本体部分
※2023年12月27日 更新
本体部分に関する中医協議論
調剤基本料は、2023年11月29日の中医協総会「調剤について(その3)」の議論において言及されています。
調剤基本料(本体部分)については、次の2つの論点が提示されています。
○ 薬局の同一グループの店舗数、立地別、処方箋受付回数・処方箋集中率の区分別の収益状況等を踏まえ、
調剤基本料について、どのように考えるか。○ 保険医療機関の敷地内にあり、不動産の賃貸借等の関係にあるいわゆる敷地内薬局に関して、
構造設備規制の見直しが行われた平成28年以降の開設状況、当該薬局の収益状況や収益構造のほか、
医療機関における公募状況等の関係性やかかりつけ機能の実態等を踏まえ、診療報酬上の評価をどのように考えるか。
調剤(その3)、在宅(その5)について 他|中央社会保険医療協議会 総会(第568回)(2023年11月29日)
効率的な立地環境・運営形態が矢面に
まずは、損益率が高い医療モール、同一建物単一医療機関にターゲットか?!
薬局立地別の損益率について、前回調査との比較データが示されています。
多くの立地環境では、損益率が低下するデータが示されながらも、「医療モール内」「病院敷地内」「同一建物内に単一医療機関が所在」の損益率が改善もしくは維持のデータが示されており、「医療モール内」「同一建物内に単一医療機関が所在」においては、相対的に高い結果が示されています。
集中率70%未満かつ受付回数4,000回超の薬局の高い損益率を示すデータも
その他に、薬局の近隣に医療機関が多く存在する場合で、損益率が高いデータが示されています。
具体的には、「集中率70%未満かつ受付回数4,000回超」のケースです。
図のように、薬局の周囲に複数の医療機関が立地し、個々の医療機関からの受付合計で4,000回を超えた場合が例示されています。
(参考)拡大抜粋部分の全体版
例示された立地は、現在調剤基本料2(26点)に該当する「受付回数4,000回超」の医療モールの立地と本質的に本質的には変わりません。
にもかかわらず、点数としては調剤基本料1(42点)もしくは調剤基本料3・ハ(32点)と高い点数を算定できる現状について、問題提起されています。
損益差額ベースでは7倍近くも
例示した薬局の高い損益状況を示すデータも示されています。
データ数は少ないもの、該当の薬局では高い全体の損益率と比べ倍近くの損益率を示すデータや、損益差額ベースでは規模が大きい分高い損益差額が示されています。
この状況は以前からにもかかわらず、令和4年度改定後においても改善しているデータも示されています。
調剤基本料2の施設基準見直しか?!
これらの分析を踏まえて、そもそも改善されるのか、またどのように改善されるのかは明らかではございませんが、改善する場合は問題のあるケースを「調剤基本料2」に該当するよう施設基準を見直す方向性が考えられます。
施設基準の見直しにおいて、どのような変更が加えられるが興味深い内容です。
該当するケースは、薬局主導で周囲の医療機関を誘致して「医療ビレッジ化」するケースが考えられますが、特に地方では自然発生的に後から医療機関が地域に固まることも考えられます。
そのようなケースへの配慮をするのかどうか、非常に気になるポイントです。
「受付回数2,000回~4,000回」規模の医療モールに近い立地もターゲットになり得るのでは・・・?
今回の厚労省提案は、調剤基本料2の要件「受付回数4,000回超+集中率70%超」で、集中率要件で逃れたケースへの対応です。
筆者は、先々に他の調剤基本料2の要件「受付回数2,000回超+集中率85%超」で、集中率の要件で逃れたケースまで広がることがないか非常に懸念しています。
具体的には、受付回数2,000回~4,000回の医療モール立地の薬局のケースです。今回データは示されていませんが経営効率が相対的に良いのは違いなく、効率性を元にした改定を進める前提であれば、中長期的に是正される可能性があります。
おそらく今回の改定でそこまで広がらないと予想していますが、先々広がった場合は、受付4,000回以上の比にならない薬局数が影響するでしょう。
敷地内薬局 終わりの始まりか
300店舗以上のグループによる敷地内薬局出店を問題視するデータを示す
前述した通り、いわゆる敷地内薬局の損益率および損益差額は増加傾向にあります。
これまで敷地内薬局に対しては、繰り返し点数の引き下げが行われているにも関わらず増加傾向にあり、
高額薬剤による薬価差獲得や機械化等によるコストダウンによるものかと考えられます。
病院の厳しい経営状況も背景にあり、全体的な敷地内薬局の増加もさることながら、
特に300店舗以上のグループにおける出店数の伸びは顕著なデータが示されています。
病院側の敷地内薬局の募集要項にも、「意図的に敷地内薬局の実績をもつ法人を誘致しようとする要件」を盛り込んでいることを指摘し、大規模チェーンが比較的有利な環境を示しています。
大規模チェーン薬局による敷地内薬局が大きくマイナスになる提案
そのような状況を踏まえて、厚生労働省より思い切った提案が提示されました。
それは「店舗単位」ではなく「開設者(グループ)単位」の評価に見直す方向性です。
敷地内薬局自体の評価は、これまで設定されていた特別調剤基本料から外れることで点数引き上げられる一方で、他の敷地内薬局「以外」の薬局の評価が、一律でペナルティーとして点数を引き下げるよう評価体制へ見直すイメージが提示されています。
大規模チェーンになればなるほど敷地内薬局のマイナス影響が大きく、引き下げ幅によっては、敷地内薬局の撤退も視野に入る改定内容でしょう。
病院との契約により早期に撤退もできない状況も考えられ、非常に苦しい運営が予想されます。
敷地内薬局 医療機関側の処方に何らかの縛りを加えるか?
年内最後の12月27日中医協総会にて、再度敷地内薬局についての言及がございました。
資料には次の内容が課題として示されています。
〇11月29日の中医協総会においては、いわゆる敷地内薬局について、誘致する医療機関側、開設する薬局側の双方において更なる強い対応をすべきとの意見があった。
個別事項(その22 横断的事項等:いわゆる敷地内薬局について) 他|中央社会保険医療協議会 総会(第576回)(2023年12月27日)
医療機関側への対応にあたり、資料には院内処方と、敷地内薬局への院外処方と比較した際の、医療機関における請求点数比較が掲載されています。
院内処方の場合が127点に対して、敷地内薬局で調剤する場合の院外処方の場合は142点に点数が増えるイメージが示されていました。
細かく見ると、処方箋料が増えていることが背景にあり、処方箋料を問題視しているように見られます。
処遇改善に向けて基本料本体へ数点プラス対応か?!
改定率がプラスで決着し、改定率の発表資料には、賃上げについて次の記載がございます。
「うち、看護職員、病院薬剤師その他の医療関係職種(上記※1を除く)について、令和6年度にベア+2.5%、令和7年度にベア+2.0%を実施していくための特例的な対応 +0.61%」
この対応について、診療報酬上で対応する場合に中医協の検討会にてどのように対応するか検討が進められています。
○ 医療関係職種は全産業平均の賃上げに追いついていない状況を踏まえ、医療機関等の職員における処遇改善について、診療報酬において対応する場合を想定し、技術的検討を進めていく必要があることから、入院・外来医療等の調査・評価分科会において必要な分析を行い、検討を進めることとしてはどうか。
医療機関等の職員における賃上げについて(その1)|令和5年度 第11回 入院・外来医療等の調査・評価分科会議(2023年12月21日)
検討会の第一回会合が行われ、調剤基本料を1点、2点増点した場合の賃金補填率試算が示されています。
調剤基本料でベア2%を目指す場合に、1~2点の増点が想定されるデータですが、最終的には年明け中旬には中医協総会で報告される見込みとのことです。
<元資料掲載記事>
調剤(その3)、在宅(その5)について 他|中央社会保険医療協議会 総会(第568回)(2023年11月29日)
医療機関等の職員における賃上げについて(その1)|令和5年度 第11回 入院・外来医療等の調査・評価分科会議(2023年12月21日)
個別事項(その22 横断的事項等:いわゆる敷地内薬局について) 他|中央社会保険医療協議会 総会(第576回)(2023年12月27日)
<参考ブログ記事>
・地域支援体制加算
※2023年12月19日 更新
地域支援体制加算に関する中医協議論
地域支援体制加算について、本体部分と同じく2023年11月29日の中医協総会にて議論されています。
具体的には、次の論点が示されています。
○ 調剤基本料1を算定する薬局、調剤基本料1以外を算定する薬局それぞれについて、
地域への貢献をより推進する観点から、どのように考えるか。
○ また、地域への貢献の観点から、薬局の地域での健康づくりの取組や認定薬局の認定状況等を踏まえ、
地域支援体制加算のあり方についてどのように考えるか。
調剤(その3)、在宅(その5)について 他|中央社会保険医療協議会 総会(第568回)(2023年11月29日)
上記の論点からは、具体的な内容はイメージしづらい内容ですが、
基本的には、点数はさることながら既存の施設基準をどう見直すか?が焦点であると考えられます。
提示された資料を元に、考えられる見直しの方向性をご紹介いたします。
加算1~4で実績差のある状況を踏まえて要件見直しも考えられる?
地域支援体制加算は、調剤基本料1もしくはそれ以外で求められる実績のハードルが異なります。
また点数の高低に応じた実績ハードルの差も設定されています。
求められるハードルが異なるため、加算の区分に応じて実績の差があるのは当たり前ではあるものの、次のように加算1~4で実績が異なるデータを示しています。
特に「重複投薬・相互作用等防止加算」、「服用薬剤調整支援料」、「麻薬の調剤」の実績にフォーカスし、違いが顕著であることを示しています。
筆者としては、次の見直しを予想しています
・加算1の選択項目が一部必須項目になる
・個々の求める実績ハードルが高まる
赤枠で示されたポイントは、変更の可能性が高いと見込んでいます。
敷地内禁煙およびたばこ販売禁止が要件化に?
薬局における禁煙の取組みについて紹介されています。
現在薬局において、健康増進法により第一種施設として、「敷地内禁煙」が義務化されています。
とはいえ、特定の条件を満たしていれば、特定屋外喫煙場所を設置することができます。
現在でも一部の薬局で禁煙がされていないデータとともに、たばこ販売されているデータも示されています。
過去にも薬局での禁煙・たばこ販売禁止が議論に及びましたが、見送られた経緯があります。
仮に今回要件として盛り込まれた場合、しっかりと禁煙対応しておかなければ、最悪のケースは診療報酬返還が発生することもありますので、早めに対策されることをお勧めします。
新型コロナ抗原キット、学校薬剤師、緊急避妊薬に関するデータ、地域連携薬局の状況データが示される
新型コロナウイルスの抗原キットの取扱、学校薬剤師の委任、緊急避妊薬の取扱について、
地域支援体制加算届け出薬局において、多く実施されている傾向を示すデータがが示されています。
また、地域支援体制加算別のと地域連携薬局・健康サポート薬局の認定・届け出状況データや、要件比較について言及されています。
あくまでも議論の視点の1つにすぎず、必ず盛り込まれると決まった内容ではありませんが、
厚生労働省としては要件化することも視野に入れていると受け取って良いでしょう。
新興感染症対策で連携強化加算の要件見直しあるか?
「感染症対応について(その2)」の議論において、次の論点が提示されています。
(新興感染症発生・まん延時における医療及びその備えに対する評価について)
○ 薬局における新興感染症への対応について、現状の連携強化加算や改正感染症法の第二種協定指定医療機関の指定要件を踏まえ、新興感染症発生・まん延時への備えに対する評価についてどのように考えるか。
感染症対応について(その2) 他|中央社会保険医療協議会 総会(第570回)(2023年12月06日)
改正感染症法では、新興感染症発生・まん延時の対応について、都道府県と薬局で協定を締結する「第二種協定指定医療機関」の仕組みが定められています。
現在新興感染症対応に関連する点数として、「連携強化加算」がありますが、本指定の要件と「オンライン服薬指導の体制」や「夜間・休日、時間外の対応」など相違点があります。
体制整備にあたり、評価をするかどうか論点として挙げられていますが、新点数もしくは「連携強化加算」の要件厳格化の方向性が考えられます。
<元資料掲載記事>
<参考ブログ記事>
・後発医薬品調剤体制加算
※2024年1月4日 更新
後発医薬品に関する中医協議論
後発医薬品については、2023年11月22日の中医協総会にて議論されています。
具体的には、次の論点が提示されています。
(医薬品の供給状況を踏まえた取組状況について)
個別事項(その5:後発医薬品、バイオ後続品、リフィル処方箋等)について|中央社会保険医療協議会 総会(第566回)(2023年11月22日)
○ 医薬品の供給が不安定な状況を踏まえ、患者への適切な薬剤の処方や、保険薬局の地域における協力促進などの観点から、一般名処方加算、後発医薬品使用体制加算、外来後発医薬品使用体制加算、後発医薬品調剤体制加算及び地域支援体制加算の評価の在り方をどのように考えるか。
後発医薬品調剤体制加算はどうなるか?
上記論点だけでは、議論の方向性が見えづらいため、会議で提示された会議資料を元に、考えられる改定の方向性をご紹介します。
後発医薬品関連の議論で影響する要素としては次の3点ではないかと考えています。
・改定前後の後発医薬品調剤体制加算の届け出・算定状況
・医薬品供給問題の影響
・全体の後発医薬品 数量シェア 目標達成度合い
まず1点目について、改定後の後発医薬品調剤体制加算については、改定直後は要件引き上げに伴い、加算1~3の総届出薬局数は低下の傾向が届け出状況のデータより見られます。一方で、算定状況のデータから加算3の薬局数は徐々に回復しつつある傾向であるとも見て取れます。
これらのデータが厚労省の想定する範囲であったどうかで、今後この点数がどのように変更されるか決まってくると考えています。
しかし、2点目の医薬品供給問題が、届け出・算定状況に大きく影響した結果であると予想されます。
後述する「地域支援体制加算」への特例措置で点数上のサポートはしているものの、まだまだ医薬品供給問題が解決されていない中で本点数を大きく見直すとなると、非常に大きな反発が予想されます。
また、3点目の全体の後発医薬品数量シェアの目標達成状況も関係すると考えています。
直近の薬価調査速報値における発表では、後発医薬品数量シェアが「約80.2%」と公表されています。この数字をどう見るかですが、現在の後発医薬品数量シェアの目標である「2023年度末までに全ての都道府県で80%以上」は到底達成が難しい数値であると思われ、目標達成ができていない状況で加算を無くすのは、いささか疑問に感じます。
※(2024年1月4日追記)後発医薬品数量シェアの目標達成状況について、最新情報がございましたので追記いたします。
電子レセプトを集計公表している「最近の調剤医療費(電算処理分)の動向 令和5年度8月号」では、すべての都道府県で80%以上をクリアしており、最も低い徳島県で80.8%の結果が公表されています。
<参考>最近の調剤医療費(電算処理分)の動向 令和5年度8月号
https://www.mhlw.go.jp/topics/medias/c-med/2023/08/dl/202308.pdf
地域支援体制加算への特例措置 12月以降はどうなるか?
後発医薬品調剤体制加算だけでなく、地域支援体制加算の特例措置についても言及されています。
次の通り、医薬品の安定供給問題を踏まえて、12月までの特例措置として地域支援体制加算に1~3点の加点があります。
中医協総会にて本特例措置を継続するかどうかについても課題として挙げられ、報道では継続も含めた議論がされているようです。
<元資料掲載記事>
個別事項(その5:後発医薬品、バイオ後続品、リフィル処方箋等)について|中央社会保険医療協議会 総会(第566回)(2023年11月22日)
医療DX(その3)、長期収載品(その2)について他|中央社会保険医療協議会 総会(第569回)(2023年12月01日)
・リフィル処方箋
※2023年12月18日 更新
医師側にリフィル処方周知に着目した報酬評価導入か?
リフィル処方箋については2度中医協総会にて議論されています。
まずは、2023年11月22日の議論で、具体的には次の論点が提示されています。
(リフィル処方箋・長期処方について)
個別事項(その5:後発医薬品、バイオ後続品、リフィル処方箋等)について|中央社会保険医療協議会 総会(第566回)(2023年11月22日)
○ リフィル処方箋の活用実態について一定程度明らかになってきたこと、他方で、リフィル処方箋の算定状況が低調であることや、患者への周知等が課題とされていることを踏まえ、更なるリフィル処方箋の導入・活用を推進する観点から、
① 例えばかかりつけ医機能にかかる評価等における、患者に対するリフィル処方箋の周知に着目した評価について、どのように考えるか。
② 例えば生活習慣病等の管理が必要な患者への対応における、リフィル処方箋による処方に着目した評価について、どのように考えるか。
③ その他リフィル処方箋の導入・活用を推進する方策について、どのように考えるか。
リフィル処方箋の数は、現場でお勤めの方であれば体感されていると思いますが、非常に少ないデータが出ています。データ上は、処方箋の数が微増しているもののの、全処方箋に占めるリフィル処方箋の割合は0.05%(令和5年3月データ)と低調です。元々、医療費適正化効果を見込んで導入されたリフィル処方箋は、期待通りの効果が発揮されていないのが実情でしょう。
厚生労働省としては、リフィル処方箋を多く発行する疾患「高血圧性疾患、アレルギー性鼻炎及び脂質異常症等」は、30日以上の長期処方と同様の傾向であることを言及し、これらの長期処方患者に普及させていきたい思惑が見て取れます。
リフィル処方箋を利用する患者評価は高く、リフィル処方経験患者の多くは、病状が安定している場合にリフィル処方箋を利用したいというアンケート回答をされています。また、医師のリフィル処方の課題として挙げる点に「患者への制度の周知」が全体の65.2%のデータを紹介されています。これらを踏まえて、「かかりつけ医機能にかかる評価等」として地域包括診療料・地域包括診療加算・特定疾患療養管理料を例示し、「患者に対するリフィル処方箋の周知に着目した評価」について意見を求めています。
生活習慣病管理料にリフィル要件化要望も
前述の中医協総会論点の②に「生活習慣病等の管理」が言及されていますが、別日の2023年12月8日の中医協総会にてより具体的な議論が進められています。
○ 生活習慣病管理料は少なくとも1月に1回以上診療することが要件とされているが、生活習慣病について2~3月に1回の診療形態が一定程度あることから、少なくとも1月に1回以上の診療を求める要件は見直してはどうか。
○ リフィル処方箋は生活習慣病に対して他の疾患と比べ多く発行されている実態があることを踏まえ、生活習慣病の疾病管理においてリフィル処方箋の活用を推進するための方策についてどのように考えるか。
医療DX(その4)、処遇改善(その2) 他|中央社会保険医療協議会 総会(第571回)(2023年12月8日)
生活習慣病管理料の対象患者は、脂質異常症、高血圧症、糖尿病患者としています。算定患者には、「少なくとも1月に1回以上の総合的な治療管理」が求められているものの、2~3月に1回の頻度で受診する患者は約2~3%、「一定程度ある」ため見直しを提案されています。
この提案に対して、報道では支払側から「リフィル処方箋を要件化すべき」という趣旨で要望があがり、対して診療側からは要件化に対する反対意見があった内容が報道されています。
最終的な結論は出ていませんが、要件化されるとなると、リフィル処方箋が一気に増える可能性があります。
<元資料掲載記事>
個別事項(その5:後発医薬品、バイオ後続品、リフィル処方箋等)について|中央社会保険医療協議会 総会(第566回)(2023年11月22日)
医療DX(その3)、長期収載品(その2)について他|中央社会保険医療協議会 総会(第569回)(2023年12月01日)
(2)薬剤調製料関連
自家製剤加算、嚥下困難者用製剤加算 錠剤粉砕時でも算定できないケース解消へ?
重複投薬、ポリファーマシー及び残薬等への対応について、関連する点数の算定状況や、薬局薬剤師の関与による好事例等が示されています。その流れで、自家製剤加算、嚥下困難者用製剤加算について、次の課題が示されています。
「調剤に係る業務のうち、自家製剤加算と嚥下困難者用製剤加算に関しては、
調剤(その2)について 他|中央社会保険医療協議会 総会(第568回)(2023年11月08日)
算定要件が類似している一方で、例えば、出荷調整等により散剤が不足する場合に、
代替として同一成分の錠剤を粉砕しても、いずれの加算も算定できない。」
主に、錠剤の粉砕時に算定する「自家製剤加算」と「嚥下困難者用製剤加算」は、算定要件に類似点がありますが、どのような場合に算定できるか、過去の疑義解釈において次のように示されています。
原則として、処方された用量に対応する剤形・規格があり、
令和4年3月31日「疑義解釈資料の送付について(その1)」(https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kinki/000235052.pdf)より抜粋
患者の服薬困難解消を目的として錠剤を砕く等剤形を加工する場合は嚥下困難者用製剤加算を算定でき、
処方された用量に対応する剤形・規格がなく、医師の指示に基づき自家製剤を行う場合は自家製剤加算を算定できる。
類似しているものの、多くは錠剤を粉砕する場合、いずれかの加算を算定できるようにされています。
しかし、昨今錠剤を粉砕してもどちらも算定できない状況が出てきています。
例えば出荷調整等で散剤が不足する場合に、同一成分の錠剤を粉砕するケースはいずれも算定できない扱いとなっています。
厚生労働省としては、論点までは提示されていませんが、この点を課題認識されています。
無菌製剤 原液調製でも無菌製剤処理算定可へ?
無菌製剤については、次の論点が示されています。
「医療用麻薬の無菌調製に関して、無菌環境の下での調製にもかかわらず、
調剤(その2)について 他|中央社会保険医療協議会 総会(第568回)(2023年11月08日)
希釈しないで行う場合は調製業務が評価されていないことについてどのように考えるか。」
医療用麻薬の調剤において、「無菌製剤処理加算」の算定回数が増加傾向にあります。
医療用麻薬の経口投与が困難な場合に、持続皮下投与が選択されることがあります。その際、中には高濃度での投与が必要となり、希釈できず原液で投与されるケースがあるようです。
その場合は、無菌製剤処理加算が算定できない扱いとなっています。この原液調製は、全ての麻薬無菌調製の内、3割程度のデータが示されています。
厚生労働省は、この状況を踏まえて、新たに評価する方向で論点提示されています。
<元資料掲載記事>
<参考ブログ記事>
(3)調剤管理料関連
※2023年12月18日更新
薬歴関連要件の見直しが図られるか?
昨今問題視されている「薬歴残業」について、論点に盛り込まれています。
○ 調剤録に記載すべきとされている服薬指導等の記録について、調剤報酬上は服薬管理指導料における薬剤服用歴が該当するが、
調剤(その2)について 他|中央社会保険医療協議会 総会(第568回)(2023年11月08日)
薬剤服用歴の記載事項が多く、薬剤師の負担になっていることを踏まえ、
必要な情報を記録するという趣旨を維持する範囲内で記載を合理化することを含め、
薬剤服用歴のあり方について、どのように考えるか。
特に「初めて来局した患者への対応した場合」や、「新規処方・処方変更があった患者に対応した場合」において、薬歴記録に要する時間が増えているデータが示されています。
薬歴への記載事項については、次の内容が言及されています。
「薬剤師が行った行為や患者から聞き取った内容等の全てを詳細に時間をかけて記録することを求めるものではなく、
必要な要点を記録することが本来の趣旨」
「要点を記載する工夫だけではなく、デジタル技術の活用等も含め取り組むべき」
また、記載内容や添付内容が多い等の指摘もあり、これら負担軽減に向けて進める方向性で問題提起されています。
(4)服薬管理指導料、かかりつけ薬剤師指導料関連
※2023年12月15日 更新
かかりつけ薬剤師指導料 併算定不可の加算の扱いを見直しへ?
2023年11月8日の中医協総会「調剤について(その2)」にて、かかりつけ薬剤師関連の議論が進められています。
かかりつけ薬剤師指導料において、併算定できない加算への対応について次の論点が示されています。
「かかりつけ薬剤師指導料を算定する薬剤師が実施する業務に関して、
調剤(その2)について 他|中央社会保険医療協議会 総会(第568回)(2023年11月08日)
併算定できない加算に相当する業務を行っていることを評価することについてどのように考えるか。」
この「併算定できない加算」とは、主に服薬情報等提供料1・2・3(30点、20点、50点)、吸入薬指導加算(30点)、調剤後薬剤管理指導加算(30点)で、いわゆる医師への情報提供が求められる加算です。
かかりつけ薬剤師指導料自体は、様々な取組みについて包括的に評価された点数で算定され、既に包括点数の中で評価されているため、これらの加算は併算定できないとされています。
しかし、実際にかかりつけ薬剤師がこれらの業務を多く実施する傾向があるデータが示されています。
厚生労働省は、これらの業務内容について改めて評価を検討する必要があるかどうかを再考する考えで、改めて論点を提示しています。
かかりつけ薬剤師指導料 24時間相談応需体制 他薬局との連携可へ?
かかりつけ薬剤師の夜間・休日対応について、以下の論点が提示されています。
「薬剤師の働き方の観点から、薬局・薬剤師における夜間・休日対応に関して、
調剤(その2)について 他|中央社会保険医療協議会 総会(第568回)(2023年11月08日)
地域において継続的に夜間・休日対応が可能となるよう、
周囲の薬局との連携を行いつつ対応することについてどのように考えるか。」
かかりつけ薬剤師指導料では、次の通り24時間の相談応需体制整備が求められています。
「患者から 24 時間相談に応じる体制をとり、開局時間外の連絡先を伝えるとともに、勤務表を作成して患者に渡すこと。」
この要件がネックで、かかりつけ薬剤師指導料の届出ができないという薬局が一定数存在します。
その背景には、薬剤師個人の負担があり、特に常勤薬剤師数が少ない薬局においては、薬局内で輪番制を築くことも難しく、精神的・身体的負担が大きくなることがあります。
薬局の1店舗あたりの常勤換算の薬剤師数が2人以下の薬局が49%存在し、2人以下の薬局では相対的に夜間・休日対応をしていない薬局が多いデータが示されています。
厚生労働省は、働き方改革の観点から、かかりつけ薬剤師の夜間・休日対応体制をとるにあたり、地域の薬局と連携した輪番制などについて検討するべきかどうか、論点として示しています。
調剤後のフォローアップ、心不全等の疾患拡充へ?
調剤後フォローアップについての取組みについて次の論点が提示されています。
「調剤後のフォローアップにより患者の状況等を把握する方法に関して、
調剤(その2)について 他|中央社会保険医療協議会 総会(第568回)(2023年11月08日)
患者・医療機関からのニーズも踏まえ、現在評価されている疾患の拡充や、
現在規定されている薬剤の範囲を広げること等、
フォローアップの業務を推進する観点からこれらの評価を行うことについてどのように考えるか。」
調剤後フォローアップについては、2020年改定にて「調剤後薬剤管理指導加算」が新設され、2022年改定においても評価の拡充が図られています。
この加算の対象患者は、インスリン等の糖尿病治療薬を利用する糖尿病患者に限定されています。
今回改めて対象患者・疾患の拡充について論点が提示されてます。
具体的に、拡充に向けて取り上げられているのは「心不全」です。
診療所・病院において、特に薬局薬剤師にフォローアップして欲しい疾患として「心不全」を挙げる割合が高く、ニーズが高い結果が示されています。
また、心不全患者が再入院する要因の一つに「治療薬服用の不徹底」が挙げられ、薬剤師による退院後の継続的な薬学的管理の必要性が示されています。
医療機関と薬局が連携して、心不全患者の症状悪化・再入院回避に繋がる事例が紹介されています。
滋賀県草津市の淡海医療センターと近隣薬局との連携事例で、薬局来局時に継続的に「心不全フォローアップシート」で療養指導を行いながら、医療機関に指導内容を毎回フィードバックをする取組みが紹介されています。
その他にも、薬局薬剤師による心不全患者へのフォローアップの事例が紹介され、フォローアップの効果を示しています。
厚生労働省は、このような背景を踏まえて、「心不全」患者へのフォローアップの取組みを評価するかどうか、論点として示しています。
リスク管理計画(RMP)の活用 手順書記載を求めるか?!
充実した服薬管理指導を行うために、次の論点が示されています。
○ 対人業務の推進・充実の観点から、処方の状況や患者の状態等に応じ、リスク管理計画に基づく患者向けの情報提供資材を活用するなど、メリハリを付けた服薬指導についてどのように考えるか。
調剤(その2)について 他|中央社会保険医療協議会 総会(第568回)(2023年11月08日)
RMPに関するアンケートデータ・事例が示されています。
RMPは医薬品リスク管理計画書を指し、PMDAのHPにて、RMPに基づいた医療従事者向け・患者向けのわかりやすい資材が掲載されています。
充実した服薬指導が必要とする場合のRMP資材使用状況や手順書への反映状況、効果に関するデータ・事例が示されています。
外来腫瘍化学療法に薬剤師が関わる効果を示すデータ提示
個別事項(その2)の「がん・疾病対策」における議論にて、外来腫瘍化学療法での薬剤師の関わりについて次の通り論点提示されています。
○ 外来腫瘍化学療法の治療の質の向上及び医師の負担軽減を推進する観点から、医師の診察前に薬剤師が服薬状況や副作用の発現状況等について薬学的な観点から確認を行い、医師へ情報提供や処方提案等を行うことについて、どのように考えるか。
オンライン資格確認、個別事項(その2:がん・疾病対策)について|中央社会保険医療協議会 総会(第559回)
外来腫瘍化学療法における薬剤師の役割は、薬剤調製だけでなく、医師と薬剤師が協働して、高度な薬学的管理を実施することが求められていす。
医師の診察前に事前に薬剤師と面談し、薬学的な観点からの副作用評価、支持療法の提案等を行う例が資料内では紹介されています。
また、このような取組みは、次の通り多くの医師からの有用であるというアンケート回答や、QOL評価尺度が優位に改善したデータをメリットとして紹介しています。
これらの多くは、病院薬剤師の取組みではありますが、院外の調剤にも関連する内容であると考えています。
現在、外来がん化学治療において、薬局ではレジメンを活用した薬学的管理等の評価に「特定薬剤管理指導加算2(100点/月1回)」があります。
院外薬局との連携をより強化する為に、加算の要件変更や点数見直しも考えられますし、加算の対象患者である「連携充実加算の算定患者」の数が増える可能性あるのではと考えています。
感染症 自宅療養患者への緊急訪問への評価が論点に
「感染症対応について(その2)」の議論において次の論点が示されています。
(新興感染症以外の感染症に対する医療の評価について)
○ 自宅等で療養する新型コロナウイルス感染症の患者に対する服薬指導・薬剤交付のための緊急訪問に係る臨時的な特例を踏まえ、薬局における自宅・宿泊療養者等への医薬品対応等への評価についてどのように考えるか。
感染症対応について(その2) 他|中央社会保険医療協議会 総会(第570回)(2023年12月06日)
新型コロナウイルス感染症のまん延時には、患者自宅に緊急訪問にて服薬指導・薬剤交付の際に、在宅点数である「在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料」が算定できる特例がありました。
現在この特例は終了し、計画的でない緊急訪問については、調剤報酬上で規定されていない状況で、服薬管理指導料等の通常外来の点数を算定することになっています。
本件について、新たに評価を設定するかどうかが論点に挙げられましたが、報道では支払側から反対の意見が挙がり、意見が割れたとの報道がありました。
<元資料掲載記事>
調剤(その2)について 他|中央社会保険医療協議会 総会(第568回)(2023年11月08日)
<参考ブログ記事>
(5)その他対人業務(服薬情報等提供料、外来服薬支援料等)関連
※2023年12月18日 更新
介護支援専門員への服薬状況の情報提供に評価?
保険薬局と保険医療機関等との連携について言及され、特に介護支援専門員(ケアマネージャー)との情報共有について以下の論点が提示されています。
「医療・介護の関係者間の連携を進める観点から、
調剤(その2)について 他|中央社会保険医療協議会 総会(第568回)(2023年11月08日)
薬局が介護支援専門員など介護関係者に対して
薬学的管理に関する情報提供を評価することについてどのように考えるか。」
介護支援専門員への情報提供は、62%の薬局で実施しているとデータが示されています。
また、薬剤師の介入により「利用者の服薬の状況が改善された」といった効果を示すデータも紹介されています。
厚生労働省は、これらのデータを踏まえて、介護支援専門員との薬学的管理に関する情報共有について評価するかどうか、論点として示しています。
薬剤性顎骨壊死の早期対応、重症化予防に医歯薬連携の必要性を示す
歯科医療における議論にて、調剤に関連する論点が次の通り提示されています。
○ 口腔内に影響を及ぼす薬剤が多数あることや近年、薬剤性顎骨壊死の患者が増えておりポジションペーパーが改定されたこと等を踏まえ、薬剤に係る医歯薬連携を推進する観点から薬剤の副作用等の情報共有等に関する連携の評価についてどのように考えるか。
歯科医療(その2)について|中央社会保険医療協議会 総会(第565回)
薬剤の中には、歯肉炎や顎骨壊死の原因となる薬剤があり、ビスホスホネート関連の顎骨壊死患者数が近年増加傾向であるデータを紹介しています。
また、次の通りポジションペーパーが2023年版に改定され、「医歯薬連携」について言及されていることが紹介されています。
どのような形で、調剤関連点数に落とし込むかは定かではありませんが、筆者の予測としては「服薬情報等提供料」の情報提供対象に歯科医師が入る形が点数の趣旨としては適合しそうではないかと考えています。
<元資料掲載記事>
<参考ブログ記事>
(6)在宅点数関連(介護報酬含む)
※2024年1月23日 更新
訪問薬剤管理で多数の論点が提示される
在宅(その5)の議論にて、訪問薬剤管理について次の論点が提示されています。
○ 在宅患者に対する訪問薬剤管理指導を実施するためには、無菌製剤処理、医療用麻薬、医療材料等の提供も必要であり、薬局で在庫確保のために負担が生じていることから、このような提供が確保できている薬局の体制評価について、どのように考えるか。
〇 終末期の患者に対しては、訪問薬剤管理指導を現行の算定可能な回数を超えて頻回に訪問する必要があることや、患者の看取り後も患者宅を訪問した業務が必要なこと等を踏まえ、これらの業務に対する評価について、どのように考えるか。
〇 訪問薬剤管理指導の時間外対応及び緊急時の患者宅への訪問の評価について、どのように考えるか。
〇 在宅移行時においては、多職種と連携しながら、退院時処方に基づく薬剤の調整、残薬整理、服薬管理方法の検討等の業務を十分な時間をかけて対応することが多いが、このような業務の評価について、どのように考えるか。また、処方医と連携して処方内容を調整する場合における薬剤師の業務の評価について、どのように考えるか。
〇 高齢者施設においても適切な医薬品提供や服薬管理等が必要なことから、以下の業務の評価について、どのように考えるか。
①現在算定することができない介護老人保健施設等の入所者の処方箋を薬局が応需した際の調剤・訪問薬剤管理指導の業務
調剤(その3)、在宅(その5)について 他|中央社会保険医療協議会 総会(第568回)(2023年11月29日)
②特別養護老人ホームにおいて、特に入所時の対応も含め、薬学管理等の実態を踏まえた業務
③短期入所の患者に対して実施する薬学管理等の業務
在宅業務の体制評価に基づく点数を提案
薬局において現在は、7割を超える薬局が在宅対応ありという調査で、実績が求められる「在宅患者調剤加算」の届け出薬局は、全体の37%というデータが紹介されています。
個々の在宅訪問にて実施した薬学的管理業務は個別点数で評価されているものの、在宅調剤体制への評価は「調剤基本料」およびその加算である「地域支援体制加算」で外来の評価と共通の評価構造となっています。
厚生労働省としては、在宅対応をする際に、麻薬管理や医療材料備蓄で外来と別の負担が発生するため、在宅調剤体制への評価を新たに設定することを検討されているようです。
過去の中医協では、医療用麻薬の供給体制について次の論点が示されていました。
「薬局において、在宅医療の場面も含む地域の多様なニーズに対応するために、
調剤(その2)について 他|中央社会保険医療協議会 総会(第568回)(2023年11月08日)
通常の医薬品と異なり管理や手続等が負担となる医療用麻薬を提供できる体制の確保を評価することについて
どのように考えるか。」
麻薬の備蓄体制について、様々な視点で課題となりうるデータを示しています。
例えば、
・不要な麻薬の取り扱い説明・回収が必要
・患者状態に応じて複数の種類・剤形・規格の医療用麻薬の取りそろえが必要
・特定の患者にしか使用されない薬剤準備や容体変化による不動在庫化
・麻薬持続注射療法、中心静脈栄養法で材料を使用する際に逆ざやが発生するケースがある
などの状況を示すデータが示されています。
ここからは予想になりますが、仮に新たな体制評価が設定されるとなれば、現状地域支援体制加算や、在宅患者調剤加算で設定される次の施設基準はシフトするであろうと考えられます。
在宅患者調剤加算(処方箋受付1回につき+15点)
[施設基準]
- 地方厚生局長に対して在宅患者訪問薬剤管理指導を行う旨の届出
- 直近一年間の在宅患者訪問薬剤管理指導料、居宅療養管理指導費及び介護予防居宅管理指導費の実績(算定回数が計10回以上)
- 開局時間以外の時間における在宅患者に対する調剤並びに薬学管理及び指導に対応できる体制整備
- 地方公共団体、医療機関及び福祉関係者等に対する在宅業務体制に係る周知
- 在宅業務従事者に対する定期的な研修
- 医療材料及び衛生材料を供給できる体制
- 麻薬小売業者の免許を取得し、必要な指導を行うことができる体制
また、無菌製剤処理の体制について、特に自薬局で整備しているケースは費用負担が重く、重点的に評価が求められる対象のため、要件に盛り込まれるのではと予想しています。
もちろん、在宅対応の体制評価が新設されれば、既存の「地域支援体制加算」はもちろん在宅関連の要件が大きく見直されるのではと考えています。
ターミナルケア 緊急訪問の訪問上限回数の見直しか?
薬剤師のターミナルケア関与において議論されています。ターミナルケアに対して、様々な面の負担の声があるものの、報酬算定できないケースがあることが問題視されています。
現在、在宅の末期がん患者等のターミナルケアにおいて、薬剤師の訪問回数が一定の上限数(対象疾患に応じて8回or12回/月)が設定されています。
看取りに近づくと訪問回数が増え、看取り直前になると、週4回を超えるケースが多くあったと報告されています。
また看取り後にも訪問をするケースもあり、訪問回数の上限を超えることを課題として挙げられています。
本件について、会議にて次の指摘事項がございました。
【ターミナルケアに係る薬剤管理について】
個別事項(その20 これまでのご指摘に対する回答について) 他|中央社会保険医療協議会 総会(第575回)(2023年12月22日)
○ 終末期に訪問回数が多いケースがあることは理解したが、その多い訪問回数がどういった必要性に基づいているのか、資料では読み取ることができない。ターミナルケアの対応は、薬剤師が中心となっているわけではないため、多職種の対応との関連性も含めて、説明が必要。
指摘事項の回答として、次の資料が挙げられています。
前者の訪問回数の必要性については、医師の指示で注射薬の麻薬が多く、同時に無菌製剤も実施されている報告がされています。
夜間・休日の緊急時における評価が新たに設定されるか?
緊急時の在宅訪問における時間外対応への評価が論点として挙げられています。
在宅現場では、急変時など緊急で訪問対応するケースがあり、中には深夜・早朝(22時~翌朝6時)の実施があることが報告されています。
そんな中、時間外対応に対する報酬は非常に低く、その原因に基礎額の算出方法に「在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料」が含まれていないことを示しています。
本件について、会議にて次の指摘事項がございました。
○ 調剤管理料の時間外加算が設定されている中で、指導料にも加算を評価するのはなぜか。重複評価になるような印象も受けるため、まずは評価の必要性について整理が必要。
個別事項(その20 これまでのご指摘に対する回答について) 他|中央社会保険医療協議会 総会(第575回)(2023年12月22日)
指摘への回答として、前述と同様の資料に、一部追記・修正を加えています。
詳細は明らかではありませんが、調剤管理料の時間外加算で、評価されている部分の説明に、次の調剤管理料の趣旨が記されています。
「患者情報等の分析・評価、処方内容の薬学的分析、調剤設計を評価するものであり患者へ指導等は服薬管理指導料で評価」
また、今回提案している新たな加算については、「夜間・深夜等の緊急時の対応のため訪問」を強調し、緊急訪問による薬学管理実施に対する評価として指導料にも加算が必要であるということを示したいのでしょうか。
退院~初回訪問までの多職種間調整・処方内容調整を評価か?
退院時~初回訪問までに、様々な取組みがあるものの評価がない現状を指摘されています。
在宅移行時の対応例として、患者宅へ訪問して、残薬の確認・服用薬の整理や家族本人に服薬状況や生活状況等を聴取する取組みや、医師との処方内容調整や多職種との情報共有・相談対応をするケースが紹介されています。
これらの取組みについて、評価をしてはどうかと論点に挙げられています。
本件について、会議にて次の指摘事項がございました。
【在宅移行期の薬剤管理について】
個別事項(その20 これまでのご指摘に対する回答について) 他|中央社会保険医療協議会 総会(第575回)(2023年12月22日)
○ この論点(在宅移行期の業務)で示されているような業務は、退院時共同指導料あるいは初回の在宅患者訪問薬剤管理指導料に含まれていると思うが、なぜ別途評価するのか、その根拠を明確にしておく必要があるのではないか。また、他の職種と連携するため、薬局薬剤師だけが評価されるようであるなら違和感がある。
指摘への回答として、医師と看護師への同時期の評価について言及しています。
医師には「在宅時医学総合管理料 在宅移行早期加算」、看護師には、「退院支援指導加算」を他の職種で評価している点数としています。
老健施設の処方箋 一部調剤報酬算定可へ!?
高齢者施設での薬剤管理において、老健施設での処方箋で調剤報酬算定できない点が論点として挙げられています。
この内容は、個別事項(その15)の論点ににおいても、次の通り言及されています。
(2.介護保険施設及び障害者支援施設において医療保険から給付できる医療サービスについて)
○ 介護保険施設に対する医療保険の給付の範囲の在り方の見直しの経緯等を踏まえ、医療と介護の両方を必要とする状態の高齢者が可能な限り施設での暮らしを継続するために、介護保険施設及び障害者支援施設において対応が困難な以下の医療行為等について医療保険からの給付を可能にしてはどうか。
(中略)②介護老人保健施設の高度な薬学的管理を必要とする患者の薬剤の処方に係る処方箋発行の費用及び調剤報酬の一部。
(略)
令和6年度診療報酬改定の改定率等について 他|中央社会保険医療協議会 総会(第574回)(2023年12月20日)
現在、老健施設の入所者に対しては、原則処方箋発行できない扱いとなっていますが、悪性腫瘍の患者への抗がん剤等の特定の薬剤に対して、処方箋が発行できる扱いとなっています。また、その場合でも調剤報酬が算定できない扱いです。これらは、老健施設が医師・薬剤師の常駐する医療提供施設であり、既に包括点数で評価しているという考え方で、重複して調剤報酬が算定できないようにしているという背景があります。
とはいえ、医療の質向上のために一部調剤報酬を算定できるようにしてはどうか論点に挙げています。
特養入所患者への評価設定か?!
特別養護老人ホームの入所患者への服薬管理指導は、在宅点数を算定することはできないものの、外来患者と同じ服薬管理指導料3を算定できる扱いになっています。
特養患者への薬学的管理において、「残薬の確認」、「新規入所者の持参薬確認・再分包」等の業務負担が大きく、評価を見直してどうかという論点が挙がっています。
施設側の要望等で様々なレベルで業務対応されていると思いますが、資料では調剤上の工夫として、包装紙に色マーカーを引いたり、一包化した薬剤と同時服用する薬剤のシートをホチキスで留めたりする対応等の細やかな対応について紹介されています。
このように、手間を掛けて対応しているのが全てではありません。
資料では調査結果として、薬学的管理を実施した時間を1人あたり5分以上が11.1%であったのに対し、1分以内は42.3%であると、業務時間に差があることを示すとともに、一部の薬局で月平均で5回以上、多数の服薬管理指導料3を算定しているデータを紹介しています。
この内容を触れているのは、算定回数の上限を想定した内容なのでしょうか。
詳細は定かでございませんが、いずれにせよ何かしら特養への薬学管理へ負担部分は評価される方向性かと思われます。
本件については、会議にて次の指摘があったようです。
○ 「特別養護老人ホームに入所している患者を訪問した場合に算定できる服薬管理指導料3について、多くは月1~2回であるが、一部の患者では月10回以上算定されている」と示されているが、どのような背景で頻回に施設に行く必要があるのか、明確にする必要がある
個別事項(その20 これまでのご指摘に対する回答について) 他|中央社会保険医療協議会 総会(第575回)(2023年12月22日)
指摘への回答として、特養に複数回訪問し投薬している事例を紹介しています。
一月に8回訪問している事例で、毎週訪問時に、それぞれ別の内服薬を投薬していたり、訪問翌日に外用剤を投薬しているなどの頻回訪問をされています。
また、すべての訪問で算定されている点数合計を紹介し、非常に高い点数を算定していることを示すデータが挙げられています。
短期入所患者対応の評価も考えられるか?
短期入所(ショートステイ)において、一部在宅(その5)で言及されていたものの、次の指摘があったようです。
○ 短期入所中において、薬学管理が適切に継続できない課題があるようだが、今回の資料では、具体的な内容が明らかではない。また、普段から在宅で薬剤管理指導を行っている薬剤師が入所を見越して対応することも考えられ、何が課題なのかもう少し整理する必要がある。
個別事項(その20 これまでのご指摘に対する回答について) 他|中央社会保険医療協議会 総会(第575回)(2023年12月22日)
指摘への回答として、特養との訪問回数の比較を示し、週一回以上の訪問の割合が少なく、一回当たり対応する利用者数が10人未満であり、少ないながらも訪問に伴う評価がないことを示しています。
在宅でのオン資、電子処方箋への評価が盛り込まれる?!
「医療DX(その5)」の議論では、次の通り在宅医療での医療DXについて言及されています。
(在宅医療等における医療DX等の活用について)
個別事項(その22 横断的事項等:いわゆる敷地内薬局について) 他|中央社会保険医療協議会 総会(第576回)(2023年12月27日)
○ 在宅療養患者の急変時に適切に対応するための情報共有や連携及び看取りに際し本人・家族の希望に沿った医療・ケアの提供を推進する観点から、地域医療情報連携ネットワークや、オンライン資格確認等システムを通じて取得された情報・電子処方箋等を活用し、質の高い在宅医療を提供する体制を整備することについて、診療報酬上どのような対応が考えられるか。
訪問薬剤管理指導において、オンライン服薬指導や、地域医療情報連携ネットワークを活用することで、質の高い在宅医療の提供が可能になる好ましいイメージが紹介されています。
また、電子処方箋の活用により、紙処方箋の運用負担軽減や原本確認のタイムラグ解消ができ、円滑な在宅医療に繋がることへの期待を言及されています。
これらから、地域医療情報連携ネットワークや電子処方箋について、何かしらの診療報酬上の評価をするか検討されている状況です。
介護報酬 答申結果
2024年1月22日の社会保障審議会・介護給付費分科会にて、令和6年度介護報酬改定案が答申されました。
令和6年度介護報酬改定に向けて(介護報酬改定案について(答申))|第239回社会保障審議会介護給付費分科会(2024年1月22日)
薬局に関連する部分は概ね次の通りです。
- 居宅療養管理指導費 1単位増
- 医療用麻薬持続注射療法加算、在宅中心静脈栄養法加算の新設
- 終末期がん以外の在宅薬学管理、算定上限月8回の対象患者について麻薬注射投与患者追加
- オンライン服薬指導 初回算定等の制限緩和
関連する部分の資料は次の通りです。
<元資料掲載記事>
調剤(その2)について 他|中央社会保険医療協議会 総会(第568回)(2023年11月08日)
調剤(その3)、在宅(その5)について 他|中央社会保険医療協議会 総会(第568回)(2023年11月29日)
令和6年度診療報酬改定の改定率等について 他|中央社会保険医療協議会 総会(第574回)(2023年12月20日)
個別事項(その20 これまでのご指摘に対する回答について) 他|中央社会保険医療協議会 総会(第575回)(2023年12月22日)
令和6年度介護報酬改定に向けて(介護報酬改定案について(答申))|第239回社会保障審議会介護給付費分科会(2024年1月22日)
<参考ブログ記事>
(7)その他
※2023年12月18日 更新
薬剤容器の貸与方式の見直しか?!
軟膏・シロップ剤の容器に関しては次の論点が示されています。
○ 患者から返却されることを想定した取扱いとされている薬剤の容器に関して、
調剤(その2)について 他|中央社会保険医療協議会 総会(第568回)(2023年11月08日)
現状の利用実態等を踏まえ、取扱いを見直すことについて、どのように考えるか。
軟膏やシロップの容器について、現行の立て付けでは、原則患者への貸与とされ、返還もしくは再利用を想定した扱いと定められています。
しかし、実際再利用しているケースは衛生上の不安から実施されていない実情を踏まえて、該当する規定を見直そうという内容です。
改定施行時期6月後ろ倒しに伴い、施設基準届け出 報告は8月へ
「医療DX(その4)」の議論では、施行時期の後ろ倒しを踏まえた各種対応について示されています。
施行時期が4月に後ろ倒しすることで、毎年7月1日時点の「施設基準の届出状況等の報告」が求められていますが、
報告の時期を「1か月後ろ倒しし、8月1日時点の報告とする」とされています。
また、各種実績要件の報告期間についての言及もございました。
改定前後で従来からの施設基準など継続性があるものは、引き続き年度単位での報告とされていますが、新設や要件変更の施設基準などは、初回の報告期間(例えば6月~翌年3月)、2回目以降の報告期間(年度単位)を分けて報告する運用が示されています。
「新設の施設基準や要件に変更がある施設基準については、新設や変更のタイミングで初回の報告期間(例えば6月~翌年3月)を明確化し、その上で、2回目以降の報告については年度単位での報告を求めることとする。」
施設基準 届出の簡素化、電子届出の拡大へ
「個別事項(その13)(明細書・簡素化)」の議論では、次の2つの論点が示されています。
○ 医療機関等の医療従事者の負担軽減及び業務効率化の観点から、施設基準の届出や添付書類の提出を一部省略化することについて、どのように考えるか。
医療DX(その4)、処遇改善(その2) 他|中央社会保険医療協議会 総会(第571回)(2023年12月08日)
○ 施設基準届出の電子化の推進策についてどのように考えるか。
まず、厚生局への届出の簡素化については、届出様式の統廃合や届出の省略化、添付資料の省略化の方向性が案として示されています。例示されている内容では、研修の修了証や平面図などは添付として求めず、適時監査等で事後確認する案が紹介されています。
次に、厚生局へ届出の電子化についての言及をご紹介します。調剤においては、後発医薬品調剤体制加算以外は電子届出可能ではあるものの、限定的であると評価されています。
具体的な対応の方向性は明らかではありませんが、電子届出がやりやすくなるよう見直しが図られることが期待されます。
<元資料掲載記事>
<参考ブログ記事>
6.薬価関連の議論
※2023年12月18日 更新
薬価調査速報値 平均乖離率約6.0%
2023年12月1日に令和5年度医薬品価格調査(薬価調査)の速報値が発表されました。令和5年度の平均乖離率は約6.0%の速報値が発表され、前回調査の約7.0%より縮小、過去30年で最小の乖離率となりました。
この薬価調査は、改定率の決定に大きく影響します。調査を通じて公定の薬価と市場実勢価格との平均乖離率が明らかになり、その結果を材料にして次年度の薬価引き下げ幅を決定します。平均乖離率が少なければ、おのずと引下げできる薬価の対象が限られてきます。結果として、例年の改定のように薬価引き下げによる財源確保が難しく、どのように財源確保するかが問題になりそうです。
長期収載品
※2023年12月20日 更新
長期収載品は選定療養導入で患者負担増の方向へ
長期収載品について、選定療養導入に向けた議論が進んでいます。このテーマについては、骨太方針2023に盛り込まれ、様々な会合で議論が進められてきました。中医協総会では、3度に渡り議論が行われ、具体的な方向性が固まりつつあります。
具体的には、長期収載品の薬価と後発医薬品の薬価の価格差の内、一定割合で患者負担とする選定療養にする方向性で議論されています。慎重に進めるために、6月以降に導入してはどうかという意見もあったようですが、導入されるのは間違い無い方向性です。
中医協総会での議論では、次のテーマ毎に課題・論点が提示されています。
※赤字部分は弊社追記
・保険給付と選定療養の適用場面について
⇒ 保険給付にするケースと、選定療養にするケースの判断はどのような基準で行うか?
・選定療養の対象品目について
⇒ とのような基準で選定療養を適用する長期収載品を定めるか?
・保険給付と選定療養の負担に係る範囲について
⇒ 患者負担の割合をどの程度にするのか?
・長期収載品の選定療養の前提となる後発医薬品の価格について
⇒ 価格差の基準となる後発医薬品の薬価をどのように定めるか?
患者希望の銘柄名処方・調剤、一般名処方で長期収載品の調剤は選定療養へ
各テーマで提示されている論点・課題をご紹介します。まずは、「保険給付と選定療養の適用場面について」ですが、次の通り論点が提示されています。
長期収載品(その2)
〇 医療上の必要性が認められる場合に関して、例えば医療上の必要性により医師が銘柄名処方(後発品への変更不可)をした場合が考えられるが、次のケースについては、どのように考えるか。
医療DX(その3)、長期収載品(その2)について他|中央社会保険医療協議会 総会(第569回)(2023年12月01日)
① 銘柄名処方の場合であって、患者希望により先発医薬品を処方・調剤した場合
② 一般名処方の場合
〇 上記に際して、後発医薬品の供給不安を踏まえ、選定療養の適用場面について、どのように考えるか。
〇 院外処方のほか、院内処方、入院時についてどのように考えるか。
長期収載品(その3)
〇 医療上の必要性があると認められる場合(例:医療上の必要性により医師が銘柄名処方(後発品への変更不可)をした場合)については、選定療養とはせず、引き続き、保険給付の対象としてはどうか。
長期収載品(その3)について 他|中央社会保険医療協議会 総会(第573回)(2023年12月15日)
〇 他方、①銘柄名処方の場合であって、患者希望により長期収載品を処方・調剤した場合や、②一般名処方の場合は、長期収載品の使用について、選定療養としてはどうか。
〇 医療上の必要性があると認められる場合については、処方等の段階で明確になるような仕組みの整理が必要ではないか。
〇 特に、薬局に後発医薬品の在庫が無い場合など、後発医薬品を提供することが困難な場合については、患者が後発医薬品を選択できないことから保険給付の対象としてはどうか。
文字では条件分岐の理解しづらいですが、次の議論の際に提示された資料で整理するとイメージしやすいです。
①のケースである、「銘柄名処方(変更不可)で先発品処方・調剤」は、医療上の必要性があると認められる場合は『保険給付』
②のケースである、「患者希望で先発品処方・調剤」は、『選定療養』
③のケースである、「一般名処方で、患者理由の先発品調剤」は、 『選定療養』
④のケースである、「後発品確保が困難な場合で先発品調剤」は、『保険給付』
となるよう議論が進んでいます。
対象薬剤の基本方針は、後発品上市後5年の長期収載品
次に、「選定療養の対象品目について」ですが、次の通り論点が提示されています。
長期収載品(その2)
〇 選定療養の対象となる長期収載品の品目の範囲については、どのように考えるか。具体的には、後発医薬品上市後、徐々に後発品に置換えが進む中で、長期収載品の薬価ルールにおいては後発品上市後の年数等に着目して薬価ルールを設定していることも参考に、次のような観点について、どのように考えるか。
医療DX(その3)、長期収載品(その2)について他|中央社会保険医療協議会 総会(第569回)(2023年12月01日)
(例) 後発品上市後の年数 / 後発品の置換率 等
長期収載品(その3)
〇 後発医薬品上市後、徐々に後発品に置換えが進むという実態を踏まえ、
長期収載品(その3)について 他|中央社会保険医療協議会 総会(第573回)(2023年12月15日)
① 長期収載品の薬価ルールにおいては後発品上市後5年から段階的に薬価を引き下げることとしている。この点を参考に、後発品上市後5年を経過した長期収載品については対象(※)としてはどうか。
② また、後発品上市後5年を経過していなくても、置換率が50%に達している場合には、後発品の選択が一般的に可能な状態となっていると考えられ、選定療養の対象としてはどうか。
※ ただし、置換率が極めて低い場合(市場に後発医薬品がほぼ存在しない場合)については、対象外。
対象となる薬剤は、現状の長期収載品の薬価ルールと同じように、「後発品上市後5年を経過した長期収載品については対象」の方向性で議論が進められています。
また、5年未満でも後発品の置換率が50%に達している場合に選定療養の対象案も示されています。
※これまでの議論通りに、次の内容で最終決定しています。
「後発医薬品の上市後5年以上経過したもの又は後発医薬品の置換率が 50%以上となったものを対象」
患者負担額の計算は複雑に、長期収載品と後発品の価格差の2分の1以下で調整
そして、「保険給付と選定療養の負担に係る範囲について」ですが、次の通り論点が提示されています。
長期収載品(その2)
〇 保険給付と選定療養の負担に係る範囲について、以下の視点を踏まえ、どのように考えるか。
医療DX(その3)、長期収載品(その2)について他|中央社会保険医療協議会 総会(第569回)(2023年12月01日)
① 患者が長期収載品を選好する場合における患者の負担の水準
② メーカーによる薬剤工夫など、付加価値等への評価
③ 医療保険財政の中で、イノベーションを推進する観点や、従来とは異なるアプローチで更なる後発医薬品への置換を進めていく観点
④ 選定療養化に伴い、一定程度、後発医薬品への置換えが進むことが想定される中で、現下の後発医薬品の供給状況
長期収載品(その3)
〇 長期収載品の薬価と選定療養の場合における保険給付範囲の水準の差について、①長期収載品を選好する場合における患者の負担の水準、②メーカーによる薬剤工夫など、付加価値等への評価、③医療保険財政の中で、イノベーションを推進する観点や、従来とは異なるアプローチで更なる後発医薬品への置換を進める観点、④選定療養化に伴い、一定程度、後発医薬品へ置換えが進むことが想定される中で、現下の後発医薬品の供給状況といった観点を踏まえ、長期収載品と後発品の価格差の少なくとも2分の1以下とする方向で検討してはどうか。例えば、当該価格差の2分の1、3分の1、4分の1といった定め方を検討することも考えられるのではないか。
長期収載品(その3)について 他|中央社会保険医療協議会 総会(第573回)(2023年12月15日)
〇 選定療養に係る負担は、医療上の必要性等の場合は長期収載品の薬価で保険給付されることや、市場実勢価格等を踏まえて長期収載品の薬価が定められていることを踏まえると、上記の一定割合の相当分としてはどうか。特に、選定療養に係る負担を徴収しないことや上記の差より低い額で徴収することは、後発医薬品の使用促進を進めていくという施策の趣旨を踏まえる必要があるのではないか。
〇 上記の論点について、本部会の議論を踏まえ、中医協において具体的に検討するべきではないか。
ここでは、要するに「選定療養とした時に、患者の自己負担額がどの程度が好ましいか」という点が主な論点となります。厚生労働省は、長期収載品と後発品の薬価の価格差のうち、具体的にどの程度の割合で選定療養とするか意見を求めています。提示された案では少なくとも2分の1以下の割合とし、3分の1、4分の1の自己負担額のシミュレーション案が紹介されています。
※その後次の方針が決定内容として報告されています。(2023年12月20日)
「後発医薬品の最高価格帯との価格差の4分の3までを保険給付の対象とすることとし、令和6年 10 月より施行する。」
もちろん、割合が下がるにつれて自己負担額が減るため、スムーズな導入を求める診療側は低い4分の1を求め、負担を減らしたい支払側は2分の1を求め、意見が分かれている状況です。
尚、示された自己負担額の案では、額の算出にあたり若干複雑な計算が必要です。資料内には、患者負担のイメージについて、図表掲載ございましたが、具体的な金額が入っていないため、イメージしやすいよう金額を入れた図表を次に作成しました。
基本的な自己負担の算出の考え方は、次の通りです。
①選定療養費の算出
長期収載品の薬価と後発品の価格差を元に、2分の1等の一定の割合を掛けて選定療養費を算出
②保険部分の患者負担額を算出
長期収載品の薬価から選定療養費を差し引いた額から、患者負担額割合掛けて保険部分の自己負担額を
ただし、①の選定療養費には、消費税が発生するため、それも加味した自己負担額を計算する必要があります。
図のように、仮に長期収載品A製品の薬価が500円、後発品の薬価が250円で、患者負担3割、価格差の2分の1を選定療養とするケースでは、自己負担額は250円となります。
前の図では、選定療養の割合が2分の1を元に例示しましたが、3分の1、4分の1で算出した場合は、次の図の通りになります。
実際の薬局内での運用では、レセコンで自動計算されるでしょうから、そこまでの仕組みの理解は不要かもしれません。
厚生労働省資料では、次の通り、後発品の価格がより低い150円のケースや患者負担割合が1割のケースでもシミュレーションデーがが紹介されているので、詳細については資料をご確認ください。
基準となる後発品の薬価は「最高薬価」で進むか?
最後に、「長期収載品の選定療養の前提となる後発医薬品の価格について」ですが、次の通り論点が提示されています。
○ 患者負担への配慮や、後発品の最低薬価を基準とする場合、①長期収載品と②最高薬価の後発品を選択する場合には、②の方が保険給付が多くなる逆転現象が生じる可能性を踏まえ、長期収載品の選定療養の場合における保険給付範囲の水準の検討に際して、前提とすべき価格差をどのように考えるか。
医療DX(その3)、長期収載品(その2)について他|中央社会保険医療協議会 総会(第569回)(2023年12月01日)
要するに、「価格差の基準となる後発医薬品の薬価をどのように定めるか?」が主な論点になっています。
厚生労働省より次のように、採用する後発品の価格毎の選定療養負担イメージを示しています。
最低薬価基準を採用した場合、後発品の最高薬価時の保険給付が長期収載品の保険給付額よりも高くなる「逆転現象」が生じる可能性があることを示しています。
報道では、診療側・支払側双方より最高薬価基準を求める意見が挙げられている報道があり、概ね「最高薬価」で進むと予想しています。
※その後次の方針が決定内容として報告されています。(2023年12月20日)
「後発医薬品の最高価格帯との価格差の4分の3までを保険給付の対象とすることとし、令和6年10月より施行する。」
<元資料掲載記事>
医療DX(その3)、長期収載品(その2)について他|中央社会保険医療協議会 総会(第569回)(2023年12月01日)
(作成:株式会社ネグジット総研 経営コンサルタント 津留隆幸)
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