2024年改定基本方針 議論の方向性提示へ
~クローズアップ調剤行政【2023年10月配信版】~

はじめに

ご覧いただき誠にありがとうございます。

薬局経営コンサルタントの津留です。

さて、ただ今ご覧いただいている本コンテンツは、

「クローズアップ調剤行政」

と題した、シリーズコンテンツです。

調剤に関連する行政動向の中で、特に注目度の高いテーマを毎月ピックアップ解説致しております。

具体的には、

  • 厚生労働省・内閣府・財務省を中心とした行政より発表される会議資料
  • 通知、事務連絡等の資料 等

を取り上げています。

記事更新は主に月初めで、前月の発表資料を中心にご紹介いたしますので、毎月継続的にご覧いただければ、調剤に関する行政動向を把握するに役立ちます。

ぜひ継続してご覧いただければ幸いです。

尚、各種記事に関するご質問等、個別のご相談は薬局経営者研究会の会員企業様に限り無料で承っております。

興味がある方はぜひご入会を検討ください。


関連YouTube

2023年9月実施の会議・通知情報

クローズアップ調剤行政【2023年10月配信版】では、2023年9月の気になる行政動向を紹介します。

9月に実施された主な会議・発出された通知等の情報は次の通りです。


2023年9月の気になる行政動向

本ブログでは何度も取り上げていますが、診療報酬改定についての具体的な議論については、
中央社会保険医療協議会(以下、中医協)で進められます。

2023年9月の間にあった中医協では、
「新型コロナウイルス感染症の診療報酬上の取扱い」に関する議論が多数あり、
一部調剤に関連する内容がございました。

しかし、固まった変更案で薬局に関する内容は少なく、
影響度合いはそこまで大きくないと判断し、今回の記事でのご紹介は見送っています。

他にも、「医薬品の販売制度に関する検討会」で議論された、
一般用医薬品の2類・3類の区分を統合する方向性で議論されている内容がございました。

こちらも薬局にとって非常に重要な内容であるものの、
診療報酬改定に直接的な影響が少ないと判断で掲載は見送り、
今回は別のテーマを取り上げます。

※取り上げなかった内容を詳しく知りたい方は、以下より原文情報を確認ください。

2023年09月15日 新型コロナウイルス感染症の診療報酬上の取扱いについて|中央社会保険医療協議会 総会(第555回)

2023年09月04日 検討会における主な議論について|第8回医薬品の販売制度に関する検討会

そこで今月は、9月29日社会保障審議会・医療保険部会における、

「令和6年度診療報酬改定の基本方針の検討について」

に関する議論の内容をご紹介いたします

ご紹介する内容は、診療報酬改定に非常に影響する内容です。

最後までぜひご覧ください。

尚、本解説の注意点ですが、事実情報を中心にご紹介していますが、
筆者個人の見解も盛り込まれています。

見解部分については、正確な情報を保障するものではございません。

また、見解はあくまでも私見であり、
組織を代表した共通見解ではないことをご理解ください。

詳細については、ご自身で原文をご覧いただくことをお勧めいたします。

令和6年度診療報酬改定 基本方針 議論の方向性案のポイントは?

第168回社会保障審議会医療保険部会「令和6年度診療報酬改定の基本方針の検討について(https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001150867.pdf)」より抜粋・加工

社会保障審議会で議論される基本方針とは?

基本方針は、「基本認識」「基本的視点・具体的方向性」「将来を見据えた課題」で構成

例年の診療報酬改定のプロセスの中で、
改定年の前年12月初旬には社会保障審議会で取りまとめられた
「診療報酬改定 基本方針」が発表されます。

この「基本方針」は、文字通り診療報酬改定の大きな方向性が示されたものです。

内容を読み解くと、次期診療報酬改定において
● どのような点がプラス方向に評価され、
● どのような点がマイナス方向に見直しされるか、

概ねイメージできる資料です。

例年の基本方針本文の大きな章構成は、
「1.改定に当たっての基本認識」
「2.改定の基本的視点と具体的方向性」
「3.将来を見据えた課題」
の3章構成となっています。

この章構成は、直近数回の診療報酬改定において変更が無く、
令和6年度改定の基本方針においても同様の構成の見込みです。

3章目の「3.将来を見据えた課題」は、この先の診療報酬改定や、
診療報酬改定外での対応として求められる内容が記載されており、
まずは1章・2章を把握しておけば、改定の方向性を把握するには十分でしょう。

基本方針は、4つの「基本認識」と4つの「改定の基本的視点」が軸

よりイメージを深めるために、令和4年度診療報酬改定の実際の基本方針をご紹介します。

次の資料は、主に基本方針本文の標題部分を抜粋した概要資料です。
全体のイメージを掴む上では、基本方針本文ではなく概要資料をご覧いただくだけでも十分可能です。


第168回社会保障審議会医療保険部会「診療報酬改定の基本方針 参考資料(https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001150871.pdf)」より抜粋・加工

ご覧の通り、令和4年度の基本方針では、
・4つの「改定に当たっての基本認識」
・4つの「改定の基本的視点」
が掲げられています。

基本認識は、過去は3~4つ設定され、
「全世代型社会保障」の実現等、比較的大きなワードが盛り込まれる傾向にあります。

基本的視点は、過去4つで設定されるのが続いており、
【重点課題】が1つ、2つ設定されています。

数年の基本認識・基本的視点を並べて見てみると、【重点課題】として新型コロナ感染症対策や医師の働き方改革等の項目が追加されています。

このように、新しい項目が盛り込まれることはありますが、一部マイナーチェンジでそこまで大きく変わらない形で設定されることが多いです。

第168回社会保障審議会医療保険部会「診療報酬改定の基本方針 参考資料(https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001150871.pdf)」より抜粋・加工

令和6年度基本方針の検討の方向性 新たなキーワードは、「物価高騰」「医療DX」

これまで過去の基本方針の内容紹介ばかりでしたが、
本題の次期診療報酬改定の基本方針について触れさせていただきます。

厚生労働省より、検討の方向性として次の通り案を示されました。

第168回社会保障審議会医療保険部会「令和6年度診療報酬改定の基本方針の検討について(https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001150867.pdf)」より抜粋・加工
第168回社会保障審議会医療保険部会「令和6年度診療報酬改定の基本方針の検討について(https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001150867.pdf)」より抜粋・加工

これらはあくまでも厚生労働省の案段階ではあります。

しかし、過去の改定関連資料を確認すると、
秋頃に示された素案から一部文言追加・修正等ありながらも、
大きな見直しが図られるケースは見受けられません。

筆者は、今回示された内容の多くが、採用されるのではないかと予想しています。

注目したいポイントは、

「物価高騰」「医療DX」

です。

過去の診療報酬改定基本方針には盛り込まれてこなかった内容で、
重要なポイントであると考えています。

「物価高騰対策」に一定点数増の対応か?

基本認識の第一項目の中に、
「物価高騰・賃金上昇、経営の状況、人材確保の必要性、患者負担・保険料負担の影響を踏まえた対応」
といった物価高騰等の費用増への対応に関する内容が盛り込まれています。

第168回社会保障審議会医療保険部会「令和6年度診療報酬改定の基本方針の検討について(https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001150867.pdf)」より抜粋・加工

昨今の原油高や円安に伴う物価高騰はご覧の皆様も体感されているかと思いますが、
医療機関・薬局においても費用増加の影響は著しく、非常に苦しい状況です。

物価の影響緩和のため、
診療報酬上の点数増等の対応で、
売上を向上させることで負担感を軽減しようという狙い
かと思われます。

一方で、診療報酬の点数増は患者側の負担増に直結します。

患者負担を考慮しながら、どのような形でどれぐらいの範囲(点数)で点数増を図るかが重要な論点となります。


ここからは、筆者の個人的な予想です。※決定事項ではないのでご注意ください

物価高騰対策でどのような形で点数増を図るかですが、
個人的には既存の調剤基本料等の一律算定の点数を増やす方向性は無いだろうと考えています。

本来、物価上昇は長期にわたり緩やかに変動するものです。

しかし、直近の物価高騰は急激に変化している状況にあり、
後々元に戻すことも視野に入れた対応をしたいという思惑が働くのではと考えています。

基本点数の単純増は点数が固定化しやすいと思われるため、
先々下げづらいそのような点数のつけ方はしないだろうという予想です。

考えられる対応としては、
●物価高騰対策を目的とした点数項目の新設
 もしくは、
●既存の物価高騰に影響する点数(地域支援体制加算等)に限定して一定点数増

の対応になるのではないかと予想しています。

物価高騰対応分を明確に切り分けし、期間限定で点数付与することにより、
状況に応じて変更できる制度にすることで、患者向けにも理解が得られやすい効果もあります。

過去の似たような点数イメージで言うと、
医薬品の安定供給問題の際に設定された地域支援体制加算の特例措置と似たような形です。


医療DX関連の具体的な方向性例は「医療情報の有効活用」「遠隔医療の推進」

「医療DX」のワードが骨太方針2022に盛り込まれて以降、様々な場面で見る機会が増えてきましたが、
今回初めて診療報酬改定基本方針の議論の中で出てきました。

基本認識の例、3項目目に
「医療DXやイノベーションの推進等による質の高い医療の実現」の表記、
その考えうる記載として、
「医療DXを推進し、医療情報の有効活用や医療機関等間の連携を進め、質の高い医療を実現」
と表記されています。

第168回社会保障審議会医療保険部会「令和6年度診療報酬改定の基本方針の検討について(https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001150867.pdf)」より抜粋・加工

また、基本的視点の例、1項目目に
「ポスト2025を見据えた地域包括ケアシステムの深化・推進や医療DXを含めた医療機能の分化・強化、連携の推進」の表記、
その具体的な方向性例として、
「医療DXの推進による医療情報の有効活用、遠隔医療の推進」
の表記があります。

第168回社会保障審議会医療保険部会「令和6年度診療報酬改定の基本方針の検討について(https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001150867.pdf)」より抜粋・加工

「医療情報を有効活用」に関連する内容は、
2023年1月より本格運用が始まった「電子処方箋」はもちろんのこと、
現在進められている電子カルテ情報・レセプト情報等を共有する
「全国医療情報プラットフォーム」の構築に向けた動きに関する内容かと思われます。

「全国医療情報プラットフォーム」のイメージは次の画像をご覧ください。

中央社会保険医療協議会 総会(第543回)「医療DXについて(その1)(https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001091100.pdf)」より抜粋・加工

これらの仕組みは、2024年度中に基盤を構築し、
レセプト情報については、救急現場で患者の意識がない場合等でも薬剤情報や診療情報の共有が可能になるよう、
2024年度内よりスタートする方針が打ち出されています。

また、電子処方箋については、2024年度末にはオンライン資格確認を導入した概ね全ての医療機関・薬局で導入を目指すとし、
必要な支援を行う方針が示されています。

「遠隔診療の推進」に関しては、これらの内容とも関連する内容です。

新たな基盤により、これまでのアナログな連携が少なくなり、
デジタルでの連携が促進され、遠隔診療の利便性が向上することが考えられます。

(参考)医療DXの推進に関する工程表〔全体像〕<内閣官房HP>

https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/iryou_dx_suishin/index.html

このような背景の中で、基本方針の中に「医療DX」が盛り込まれています。

中医協での議論で、医療DXに関する議論は前月お届けした「診療報酬改定DX」の内容以外は、
まだ具体的なものは明らかになっていませんが、
少なからず「電子処方箋」への対応についての評価は検討されるかと思います。

その他、情報通信機器等を用いた、いわゆるオンライン服薬指導がよりやりやすい方向に議論が進むかも知れません。

終わりに

今月の記事では、9月29日の社会保障審議会 医療保険部会で紹介された
「令和6年度診療報酬改定の基本方針の検討について」を中心に
特に押さえていただきたいポイントをピックアップしました。

物価高騰対策は何かしらで報酬改定に反映されるだろうと思っていましたが、
基本方針の最初の項目として挙げられるとは予想しておらず、驚きの内容でした。

基本方針に盛り込まれれば、少なからずプラスの方向性で評価されると思われるので、
薬局にとっては有り難い内容であると感じました。

また、新しい情報が出てきましたら、続報で情報提供いたします。

今月の「クローズアップ調剤行政」は以上です。

次号もお楽しみにお待ちください。

(作成:株式会社ネグジット総研 経営コンサルタント 津留隆幸)

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