調剤報酬改定2024解説
③医療DX推進体制整備加算
 【2024年3月5日告示板・疑義解釈その2反映】

令和6年度診療報酬改定は、本年度より施行日が変更され、2024年6月1日に施行されます。

厚生労働省より個別点数の詳細な要件が発表されているものの、どこに情報が掲載されているかわからない方もいらっしゃるでしょう。

そこで、厚生労働省からの発表内容を踏まえて、特に医療DX推進体制整備加算の改定ポイントを解説します。

発表資料原文をご覧になりたい方は、以下の調剤関連まとめページをご確認ください。

また、次のYouTube動画でも、調剤報酬改定に関する内容を解説していますので合わせてご覧ください。

目次(こちらをクリックでメニュー開閉できます)

 ※その他項目は、準備が整い次第順次公開予定です。

新設点数「医療DX推進体制整備加算」の概要

「医療DX」とは

本年度の診療報酬改定において、「医療DX」は大きなテーマの1つです。

「医療DX」という言葉は、ここ数年で目にする・耳にする機会が増えた言葉かと思います。

「医療DX」を簡単に言うと、は保健・医療・介護の様々な場面でデジタル技術を積極活用し、社会や生活の形を変えてくことを差します。

この取組みには、医療の現場で基盤となるシステムが広く導入されることが不可欠で、初期のシステム導入費用だけでなく、体制維持に様々な負担が考えられます。

これらの負担を踏まえて新設された点数が「医療DX推進体制整備加算」です。

全ての患者が対象、月1回まで算定可

「医療DX推進体制整備加算」は、施設基準を満たしていれば、調剤基本料の加算として、4点(月に1回)算定できます。

すべての患者が対象となる点数のため、非常に重要な点数です。

ただし、月1回の算定上限があることには注意です。

施設基準を満たすには、様々な医療DXに対応する体制整備が求められます。

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求められる施設基準の概要

求められる施設基準の概要を次の表(1)~(9)に取りまとめました。

補足ですが、(6)の「電子カルテ情報共有サービス」は、電子カルテの情報をを共通のサーバーでクラウド上で管理することで複数の医療機関間・患者で電子カルテ情報が閲覧できるようにする仕組みです。

令和7年度中に本格運用に向けて準備中の段階のため、本基準には経過措置が定められてます。

薬局での対応が明らかになるまで、一旦考慮しなくて良い項目といって良いでしょう。

このように、国側で準備が整っていない基準や、時間を要する基準等を中心に複数の経過措置が定められています。

それらの基準を除けば、多くの薬局で達成できる基準ではないかと考えています。

ただし、2月の中医協答申時以降、複数の追加情報がが有ることにご注意ください。

次に、2月以降の追加情報をご紹介します。

医療DX推進体制整備加算 施設基準の概要
(1)電子レセプト オンライン請求の実施
(2)オンライン資格確認体制
(3)オンライン資格確認システムを通じた情報取得、閲覧・活用体制
(4)電子処方箋 調剤体制
 ※(経過措置)令和7年3月31日まで満たしているものとみなす
(5)電子調剤録、電子薬歴による管理体制
 ※処方箋、情報提供文書等を紙媒体のまま保管可
 ※オンライン資格確認等の情報システム連携が望ましい
(6)電子カルテ情報共有サービスによる取得情報の活用体制
 ※(経過措置)令和7年9月30日まで満たしているものとみなす
(7)マイナ保険証 一定割合以上の実績
 ※(経過措置)令和6年10月1日から適用、求める利用率は別途示される見込み
(8)医療DX推進体制等の掲示
  <掲示内容>
  (イ) オンライン資格確認システムを通じた情報取得、閲覧・活用体制
  (ロ) マイナ保険証利用促進等 医療DXを通じて質の医療提供
  (ハ) 電子処方箋、電子カルテ情報共有サービス等の医療DXに係る取組実施
 ※(経過措置)(ハ)は、令和7年9月30日まで満たしているものとみなす
(9)(8)を原則ウェブサイトに掲載
 ※ホームページ等を有しない保険薬局は求められない
 ※(経過措置)令和7年5月31日まで満たしているものとみなす
(10)サイバー攻撃に対する対策含めセキュリティ全般についての適切な対応

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2月中医協答申以降の新情報

医療DX推進体制整備加算の施設基準については、2月14日に中医協より診療報酬改定の答申資料で概ね明らかになっていましたが、3月5日の関連通知にはいくつか新しい情報が追加されています。

また、3月29日 疑義解釈(その1)、4月12日 疑義解釈(その2)が発表されていますので、合わせて重要なポイントをご紹介いたします。

電子調剤録の文言が削除へ

「(5)電子調剤録、電子薬歴による管理体制」については、次の通り内容が変更されています。

■ 2月14日発表 答申記載内容

(5)電磁的記録による調剤録及び薬剤服用歴の管理の体制を有していること。

■ 3月5日発表 関連通知記載内容

(5) 電磁的記録により薬剤服用歴等を管理する体制を有していること。ただし、紙媒体で受け付けた処方箋、情報提供文書等を紙媒体のまま保管することは差し支えない。なお、保険薬局における医療DXによる情報活用等の観点から、オンライン資格確認、薬剤服用歴等の管理、レセプト請求業務等を担う当該保険薬局内の医療情報システム間で情報の連携が取られていることが望ましい。

2月の答申段階では、「電子調剤録」を求める表記でしたが、3月の関連通知記載では、「調剤録」の表現が無くなり、「薬剤服用歴等」にまとめた表現にされています。

また、紙媒体で受け付けた処方箋保管についての言及もあり、処方箋の裏打ちで運用されることが多い調剤録の扱いは、「電子化」まで求められるか曖昧な状況です。

マイナ保険証実績の利用率は「別途示す予定」

「(7)マイナ保険証 一定割合以上の実績」については、次の通り内容が変更されています。

■ 2月14日発表 答申記載内容

(7)マイナンバーカードの健康保険証利用について、実績を一定程度有していること。

<経過措置>

(3)(7)の基準については、令和6年10月1日から適用する。

■ 3月5日発表 関連通知記載内容

(7) マイナンバーカードの健康保険証としての利用率が一定割合以上であること。

<2 届出に関する事項>

(3) 1の(7)については、令和6年10月1日から適用する。なお、利用率の割合については別途示す予定である。

当初は「一定程度」の実績がどの水準か、疑問に残る記載ではあったものの、後に具体的な利用率で別途示すことが明らかになっています。

利用率を高めるためには、患者様へのお声掛け等の啓発活動を時間をかけて取り組む必要があります。

2024年1月~11月にかけては、次のようにマイナ保険証利用率の実績に応じた支援金が出る仕組みもあります。
※一部見直しあり、次項新情報参照

しっかり目標設定をして早期に取組み開始することをお勧めいたします。

(4月10日新情報) 後半期の支援金制度見直し、5月~7月の実績に応じて最大10万円支給へ

4月10日に実施された社会保障審議会・医療保険部会にて、厚生労働省よりマイナ保険証利用促進の支援金制度について見直しの方針が打ち出されました。

5月までの実績に基づく、前半期の支援金支給は従来通りではあるものの、後半期(6月~11月)の支援金制度は廃止し、新制度は利用人数の増加かつ定額の給付へ見直されることになります。

具体的には、2024年5月~7月を集中取組月間とし、次の図表のように2023年10月実績および利用人数からの増加量に応じて、3~10万円まで段階的に定額の支給額が決まる仕組みとなります。

尚、支給の要件には、マイナ保険証啓発のポスター掲示、チラシ配布の徹底が支給条件となっています。

具体的な掲示物の要件が追加

「(8)医療DX推進体制等の掲示」については、次の通り内容が変更されています。

■ 2月14日発表 答申記載内容

(8)医療DX推進の体制に関する事項及び質の高い調剤を実施するための十分な情報を取得し、及び活用して調剤を行うことについて、当該保険薬局の見やすい場所に掲示していること。

■ 3月5日発表 関連通知記載内容

(8) 医療DX推進の体制に関する事項及び質の高い医療を提供するための十分な情報を取得し、及び活用して調剤を行うことについて、当該保険薬局の見やすい場所に掲示していること。具体的には次に掲げる事項を掲示していること。

(イ) オンライン資格確認等システムを通じて患者の診療情報、薬剤情報等を取得し、調剤、服薬指導等を行う際に当該情報を閲覧し、活用している保険薬局であること。

(ロ) マイナンバーカードの健康保険証利用を促進する等、医療DXを通じて質の高い医療を提供できるよう取り組んでいる保険薬局であること。

(ハ) 電子処方箋や電子カルテ情報共有サービスを活用するなど、医療DXに係る取組を実施している保険薬局であること。

<2 届出に関する事項>

(4) 令和7年9月30日までの間に限り、1の(8)の(ハ)の事項について、掲示を行っているものとみなす。

疑義解釈(その1)では、これら3つの項目は、別々に掲示する必要はなく、まとめて掲示しても差し支えないとされています。

また、厚生労働省HP「オンライン資格確認に関する周知素材について」に掲載されているポスターやチラシは、本基準に求められる内容を満たしており、参考にすることを示しています。

ウェブサイトへの掲示内容記載 ウェブサイト有しない薬局は除外

「(9)(8)を原則ウェブサイトに掲載」については、次の通り内容が変更されています。

■ 2月14日発表 答申記載内容

(9)(8)の掲示事項について、原則として、ウェブサイトに掲載していること。

<経過措置>

(4)令和7年5月31日までの間に限り、(9)の基準に該当するものとみなす。

■ 3月5日発表 関連通知記載内容

(9) (8)の掲示事項について、原則として、ウェブサイトに掲載していること。ただし、ホームページ等を有しない保険薬局については、この限りではない。

<2 届出に関する事項>

(5) 1の(9)については、令和7年5月31日までの間に限り、当該基準を満たしているものとみなす。

当初はどのような店舗においても、ホームページを整備が求められるような表記でありましたが、後にホームページが無ければ掲載が猶予される表記が追加されています。

とはいえ、ホームページがある薬局については、対応が求められることには変わりないため注意ください。

また、厚生労働省HP「オンライン資格確認に関する周知素材について」に掲載されているポスターやチラシは、本基準に求められる内容を満たしており、参考にすることを示しています。

セキュリティ対策要件が新たに追加

「(10)サイバー攻撃に対する対策含めセキュリティ全般についての適切な対応」については、新たに追加された項目です。

本基準については、「連携強化加算」においても同様の基準が定められています。

次のリンク先をご確認いただきご準備ください。

電子処方箋 調剤結果登録 速やかに登録を求める

4月12日発表の「疑義解釈について(その2)」では、電子処方箋について以下の言及がございました。

問4 医療DX推進体制整備加算の算定要件として、「紙の処方箋を受け付け、調剤した場合を含めて、調剤結果を電子処方箋管理サービスに登録」することとされているが、保険薬局において1週間分の調剤結果をまとめて登録するような場合でも要件を満たすか。

(答)不可。処方医への疑義照会を踏まえた薬剤の変更等を含め、最新の薬剤情報を活用できるようにするため、調剤後速やかに調剤結果を電子処方箋管理サービスに登録すること。

まだまだ電子処方箋の対応は少ないかと思いますが、調剤結果登録は都度行うよう運用を検討しましょう。

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