骨太方針2023等の政府方針で調剤に影響するポイントは?
~クローズアップ調剤行政【2023年7月配信版】~

はじめに

ご覧いただき誠にありがとうございます。

薬局経営コンサルタントの津留です。

さて、ただ今ご覧いただいている本コンテンツは、

「クローズアップ調剤行政」

と題した、シリーズコンテンツです。

調剤に関連する行政動向の中で、特に注目度の高いテーマを毎月ピックアップ解説致しております。

具体的には、

  • 厚生労働省・内閣府・財務省を中心とした行政より発表される会議資料
  • 通知、事務連絡等の資料 等

を取り上げています。

記事更新は主に月初めで、前月の発表資料を中心にご紹介いたしますので、毎月継続的にご覧いただければ、調剤に関する行政動向を把握するに役立ちます。

ぜひ継続してご覧いただければ幸いです。

尚、各種記事に関するご質問等、個別のご相談は薬局経営者研究会の会員企業様に限り無料で承っております。

興味がある方はぜひご入会を検討ください。

関連YouTube動画

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2023年6月実施の会議・通知情報

クローズアップ調剤行政【2023年7月配信版】では、2023年6月の気になる行政動向を紹介します。

6月に実施された主な会議・発出された通知等の情報は次の通りです。

厚生労働省

内閣府

財務省

  • 特に重要会議・通知情報は無し

2023年6月の気になる行政動向

6月16日に

経済財政運営と改革の基本方針(以下、骨太方針)2023

が閣議決定されました。

骨太方針は、政府の政策における基本的な考え方を示した内容で、今後の予算編成や診療報酬にも関連するため、薬局運営に影響しうる資料言っても過言ではないでしょう。

また、その他にも6月には様々な政府方針に関する資料が多数発表されています。

・新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2023改訂版(令和5年6月16日 閣議決定)
・成長戦略等のフォローアップ(令和5年6月16日 閣議決定)
・規制改革実施計画(令和5年6月16日 閣議決定)
・こども未来戦略方針(令和5年6月13日 閣議決定)
・デジタル社会の実現に向けた重点計画(令和5年6月9日 閣議決定)
・医療DXの推進に関する工程表(令和5年6月2日 医療DX推進本部決定)

本記事においては、これらの方針資料から、薬局に関連する部分をピックアップ解説いたします。

尚、原文については、6月29日実施の社保審・医療保険部会の「資料6」にて方針資料を取りまとめた抜粋資料がございます。
原文が気になる方は、以下の関連リンクよりご覧ください。

■オンライン資格確認、第四期医療費適正化基本方針について 他|第165回社会保障審議会医療保険部会

https://mc.nextit.co.jp/revision-of-fees/247761/

経済財政運営と改革の基本方針2023(骨太方針2023)

内閣府NewWave 「経済財政運営と改革の基本方針2023(https://www.cao.go.jp/press/new_wave/20230626.html)」より抜粋

骨太方針2023の重点ポイントは、「少子化対策」

2023年度の骨太方針の副題は、

「加速する新しい資本主義~未来への投資の拡大と構造的賃上げの実現~」

となっています。

「未来への投資」が副題に盛り込まれているように、
今回の骨太方針では、「少子化対策・こども政策」について強く打ち出されている内容となっています。

これらの政策は、医療政策に関係ないと思うかも知れませんが、全く影響が無いわけではございません。

新たに1つの政策を強く推進する際には、

「財源をどう確保するか?」

という問題が出てきます。

仮に、新たな財源を持たず、今の財源の中でやりくりするとなれば、
多くの割合を占める「社会保障費」の圧縮は避けられません。

つまり、少なからず診療報酬改定における予算配分に影響が出てきます。
そのため、骨太方針にどのような文言が記載されるか、注目のポイントとなっています。

次期診療報酬改定に関する記載 医師会・薬剤師会は前向きな評価

骨太方針2023の中には、次期診療報酬についての記載があります。

具体的には、次のように記載されています。

■骨太方針2023 閣議決定版 診療報酬関連文章抜粋

次期診療報酬・介護報酬・障害福祉サービス等報酬の同時改定においては、物価高騰・
賃金上昇、経営の状況、支え手が減少する中での人材確保の必要性、患者・利用者負担・
保険料負担への影響を踏まえ、患者・利用者が必要なサービスが受けられるよう、必要な対応を行う。

内閣府「経済財政運営と改革の基本方針2023(https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/honebuto/2023/2023_basicpolicies_ja.pdf)」より抜粋

実は、赤字部分が元々の素案の表記より変更されています。

素案では、保険料負担について、次のように保険料負担抑制のニュアンスが強い表現がされていました。

■骨太方針2023 原案 診療報酬関連文章抜粋

次期診療報酬・介護報酬・障害福祉サービス等報酬の同時改定においては、物価高騰・
賃金上昇、経営の状況、支え手が減少する中での人材確保の必要性、患者・利用者負担・
保険料負担の抑制の必要性を踏まえ、必要な対応を行う。

第8回経済財政諮問会議 「経済財政運営と改革の基本方針 2023(仮称)原案(https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2023/0607/shiryo_01.pdf)

診療報酬改定の記載部分に、
保険料負担「抑制」の文言が入れば診療報酬のマイナスに繋がりかねない
との懸念からか、最終調整過程の中で、文言修正が行われたようです。

そのため、日本医師会・日本薬剤師会は、記者会見の骨太方針2023に対するコメントにおいて、
この表現変更に対して前向きな評価のコメントがありました。

最終的な予算配分については、今後どのような決着になるかはまだまだ読めませんが、
骨太方針2023の推進にあたっては、財源面で先の診療報酬改定をどうするかに影響するため、議論の動向が気になるところです。

第165回社会保障審議会医療保険部会「資料6 「経済財政運営と改革の基本方針 2023」、「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画 2023 改訂版」及び「規制改革実施計画」等について(https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001114701.pdf)」より抜粋・加工

骨太方針2023の全体像

では、骨太方針2023の中身を見てまいりましょう。

骨太方針は、5章構成で全42ページに渡ります。

非常にボリュームの多い資料で、次の画像のとおり、概要資料も公開されていますが、非常に細かい文字で書かれておりパッと見で分かりづらいかもしれません。

「経済財政運営と改革の基本方針2023 概要(https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/honebuto/2023/summary_ja.pdf)」より抜粋

医療・介護は不断の改革、保険料負担の上昇を抑制する重要性を示す

医療に関しては、4章の中で「2.持続可能な社会保障制度」の中で取り上げられています。
ここでも「少子化対策」に関する内容が強く示されているように見受けられます。

4章・2の冒頭には、医療・介護等の改革について、次の記載がございます。

第2章3「少子化対策・こども政策の抜本強化」に基づく対策を着実に推進し、
現役世代の消費活性化による成長と分配の好循環を実現していくためには、
医療・介護等の不断の改革により、ワイズスペンディングを徹底し、
保険料負担の上昇を抑制することが極めて重要である。

上記の「ワイズスペンディング」という言葉は聞き慣れないかもしれませんが、直訳すると「賢い支出」となります。

平たく言うと、
政策効果の低い支出を絞り、
政策効果の高い支出の割合を増やす動きです。

骨太方針の中では、「医療・介護等の不断の改革」「ワイズスペンディングを徹底」といった改革に向けた強い表現がされています。
また、前年の骨太方針2022にあった、「世代間の対立に陥ること無く」といった落ち着いた表現は削除されています。

これら材料から、
少なからず世代間の対立が起こりうる「高齢者に対する負担増」に繋がる
不断の改革を政府としては強く推し進めていく意図が推察できます。

医療・介護の改革の方向性は、高齢者への医療費負担増か?!

では、どのような不断の改革が進められるか気になるところですが、次のように記載されいます。

全ての世代で能力に応じて負担し支え合い、必要な社会保障サービスが必要な方に適切に提供される
全世代型社会保障の実現に向けて、改革の工程の具体化を進めていく

この改革の工程については注釈にて、「全世代型社会保障の構築に向けた取組について(全世代型社会保障構築会議 報告書)」に基づく給付と負担のあり方を含めた工程とされています。

次の資料は、報告書に記載の「医療・介護制度の改革」に関する概要資料です。

資料には、「全ての世代で、増加する医療費を公平に支え合う仕組みを早急に構築する必要がある」とし、
取り組むべき課題に、更なる高齢者への医療費負担増に繋がる内容が示されています。

第162回社会保障審議会医療保険部会「全世代型社会保障構築会議の報告書(概要)(https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001037732.pdf)」より抜粋

薬局・薬剤師は、対人業務の充実、対物業務の効率化、他職種連携等の推進が明記

前年の骨太方針においては、薬局・薬剤師に関する言及がほとんど見られませんでしたが、
骨太方針2023においては記載がありました。

具体的には、次の記載がございました。

「薬局薬剤師の対人業務の充実、対物業務の効率化、地域における他職種の連携等を推進する」

また、リフィルに関する言及もございます。

関係者・関係機関の更なる対応※3により、リフィル処方の活用を進める。
 ※3 保険者、都道府県、医師、薬剤師などの必要な取組を検討し、実施する。」

これらだけで、どのような変化があるかというのは難しいですが、
少なからず2024年診療報酬改定を意識した表現ではないかと推察しています。

第165回社会保障審議会医療保険部会「資料6 「経済財政運営と改革の基本方針 2023」、「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画 2023 改訂版」及び「規制改革実施計画」等について(https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001114701.pdf)」より抜粋・加工

医療DXは「政府を挙げて確実に実現」、電子処方箋普及拡大に向けた環境整備を

もちろん、昨今よく目にする「医療DX」の内容も盛り込まれています。

「医療DX推進本部において策定した工程表に基づき、
医療DXの推進に向けた取組について必要な支援を行いつつ政府を挙げて確実に実現する」

として、

・オンライン資格確認の用途拡大

・2024年秋に健康保険証廃止

・電子処方箋の全国的な普及拡大に向けた環境整備 等

の内容が盛り込まれています。

第165回社会保障審議会医療保険部会「資料6 「経済財政運営と改革の基本方針 2023」、「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画 2023 改訂版」及び「規制改革実施計画」等について(https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001114701.pdf)」より抜粋・加工

「医療DX推進に関する工程表」では、より具体的な項目が盛り込まれる

6月2日に医療DX推進本部にて決定した「医療DX推進に関する工程表」においては、より具体的な内容が盛り込まれています。

骨太方針2023には記載が無かった内容で、
・スマホからの資格確認の構築(2023年度内)
・生活保護(医療補助)のオンライン資格確認対応(2023年度内) 等
の内容が工程表には盛り込まれています。

その他に「診療報酬改定DX」についての言及がございます。

診療報酬改定DXは、診療報酬改定のプロセス自体を見直す取組みで、レセコンや薬歴等のベンダーによるシステム開発の効率化を進めるためのものです。

この取組みを進める過程で、診療報酬改定の時期について調整する可能性がございます。

工程表本文には、
「これらの取組により医療機関等の間接コストや作業負担の軽減を図るとともに、診療報酬改定の施行時期の後ろ倒しに関して、実施年度及び施行時期について、中央社会保険医療協議会の議論を踏まえて検討する。」
としており、今夏には施行時期が決まる見込みです。

中医協での本件についての議論はこれからとなり、2024年改定のスケジュールも影響がある可能性が少なからずございます。

第165回社会保障審議会医療保険部会「資料6 「経済財政運営と改革の基本方針 2023」、「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画 2023 改訂版」及び「規制改革実施計画」等について(https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001114701.pdf)」より抜粋・加工

終わりに

今月の記事では、骨太方針を中心とした政府方針資料の中で、特に押さえていただきたいポイントをピックアップいたしました。

骨太方針2023に対する筆者の印象は、薬局・薬剤師がピンポイントにターゲットとなる内容が盛り込まれておらず、ポジティブな内容が多いと受け止めています。

とはいえ、「医療・介護の不断の改革」という文言が示されている以上、薬局にマイナス影響となる改定が少なからず残った骨太の方針でもあると感じました。

皆様の印象はいかがでしたでしょうか。

細かい内容や、医科に関する内容については、割愛していますので気になる方はぜひ原文をご覧ください。

(作成:株式会社ネグジット総研 経営コンサルタント 津留隆幸)

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