令和6年度診療報酬改定は、本年度より施行日が変更され、2024年6月1日に施行されます。
厚生労働省より個別点数の詳細な要件が発表されているものの、どこに情報が掲載されているかわからない方もいらっしゃるでしょう。
そこで、厚生労働省からの発表内容を踏まえて、特にかかりつけ薬剤師指導料の改定ポイントを解説します。
発表資料原文をご覧になりたい方は、以下の調剤関連まとめページをご確認ください。
また、次のYouTube動画でも、調剤報酬改定に関する内容を解説していますので合わせてご覧ください。
※(免責事項) 本記事の内容は、2024年4月17日時点の情報を元にしています。行政発表資料を元に、誤りが無いよう十分注意して本記事は制作しているものの、すべて正しい情報であることを保障するものではありません。当該情報にもとづいて起こされた行動によって生じた損害・障害・不利益等に対する責任は、当社では負いかねますのであらかじめご了承下さい。
目次(こちらをクリックでメニュー開閉できます)
- 1.調剤技術料
- ① 調剤基本料本体・地域支援体制加算【別記事】
- ② 連携強化加算【別記事】
- ③ (新)医療DX推進体制整備加算【別記事】
- 2.薬学管理料
※その他項目は、準備が整い次第順次公開予定です。
かかりつけ薬剤師業務 見直しの概要
かかりつけ薬剤師への負担を考慮した改定
かかりつけ薬剤師業務は、従来から重点的に対応が求められる取組みではありましたが、特に小規模薬局において身体的・精神的な負担の声が少なからずありました。
また、かかりつけ薬剤師として積極的に対応されている取組みであっても、かかりつけ薬剤師指導料に包括されている理由で、別の点数が算定できない状況が一部ありました。
これらの背景から、本改定ではかかりつけ薬剤師業務における負担感軽減と評価の拡充を図るために次の見直しが行われました。
- 24時間対応に係る要件の見直し
- 服薬管理指導料の特例(かかりつけ薬剤師と連携する薬剤師の場合)の見直し
- かかりつけ薬剤師が通常行う業務の範囲の見直し
すべて薬局経営にプラスになる項目です。
かかりつけ薬剤師 負担軽減に向けた対応
24時間相談要件を緩和 休日・夜間相談体制へ
改定に向けた議論の中に、特に1人薬剤師のような小規模の薬局において、24時間相談応需がネックで、かかりつけ薬剤師の届出をしていない薬局が多数見られました。
元々は患者側に不具合が無いようにという視点で「24時間」としていたが、「休日・夜間」の対応で不具合が無いだろうとの判断で、表現が緩やかになっています。
また、相談応需は原則かかりつけ薬剤師が対応することとしていますが、電話が取れなくても「速やかに折り返して連絡することができる体制」を整備すること求めています。
明確に常時電話が取れるよう待機することを求めていないことが示されたことにより、かかりつけ薬剤師への心理的負担を軽減できると考えられます。
勤務表のお渡しは不要、同意書様式大幅簡素化へ
通常の運用で最も変化する点は、「勤務表」の扱いと「同意取得」のサンプル様式変更でしょう。
これまで、かかりつけ薬剤師の同意をいただいた患者に対して、勤務表をお渡しする運用は、今後不要になります。
また、提示されていた同意書サンプル様式が簡素化され、かかりつけ薬剤師個人の経歴が記された部分が削除されたのが大きなポイントです。
患者からのストーカー行為への懸念の声を過去に耳にしたことがありますが、これらの見直しにより不安を払拭しようという狙いが見えます。
(参考リンク)かかりつけ薬剤師指導料同意書様式
※元資料リンク変更によるリンク切れの場合がございます。
かかりつけ薬剤師と連携する薬剤師 人数拡大&要件見直し
かかりつけ薬剤師の不在時に、事前に同意を得た連携する薬剤師であれば「服薬管理指導料の特例(59点)」を算定できます。
この連携する薬剤師の人数は、これまで1名に限られていましたが、改定後は複数名設定可へ変更されました。
ただし、連携する薬剤師の要件が、次の通りかかりつけ薬剤師と同じ水準まで求められるよう厳格化されています。
・週32時間以上勤務
・認定薬剤師取得
・医療に係る地域活動の取組み参画
従来と同じであれば、連携する薬剤師を追加する際、再同意の日付・署名が必要であるためご注意ください。
【疑義解釈(その2)】 「医療にかかる地域活動の取組み」について
本改定にて改定されていない点ではあるものの、かかりつけ薬剤師指導料の届け出に求められる「医療に係る地域活動の取組」に関する疑義解釈が発表されています。
これまで、地域活動として次の例が示されていました。
・行政機関や学校等の依頼に基づく医療に係る地域活動(薬と健康の週間、薬物乱用防止活動、注射針の回収など)への主体的・継続的な参画(ただし、薬局内でのポスター掲示や啓発資材の設置のみでは要件を満たしているとはいえない。)
2024年4月12日 厚生労働省「疑義解釈の送付について(その2)」を抜粋
・行政機関や地域医師会、歯科医師会、薬剤師会の協力のもとで実施している休日夜間薬局としての対応、休日夜間診療所への派遣・委嘱を受けて行う学校薬剤師の業務等
改めてこの例示された地域活動内容について、「引き続き当面の間は差し支えない」とされています。
ただし、「主体的・継続的」な参画を求めていて、年1回だけ等のアリバイ的な参画は本来の趣旨とは異なりますのでご注意ください。
吸入薬指導加算・調剤後薬剤管理指導料 併算定可へ
これまで、かかりつけ薬剤師指導料において、吸入薬の実技指導・医療機関への情報提供を評価する「吸入薬指導加算」、糖尿病患者への調剤後フォローアップ・医療期間への情報提供を評価する「調剤後薬剤管理指導加算※」を同時に算定することができませんでした。
※ 2024年改定により同加算は廃止され、「調剤後薬剤管理指導料1・2」が新設移行されています。
これは、かかりつけ薬剤師指導料の算定要件に、調剤前及び調剤後の指導や処方医への情報提供が要件に含まれていることが考えられます。
一方で、吸入指導や調剤後フォローアップ等の業務は、かかりつけ薬剤師指導料を算定する薬剤師の方が多く実施しているというデータが示され、評価を進めてはどうかという議論が行われました。
そのような背景もあり、本改定で「吸入薬指導加算」「調剤後薬剤管理指導料」が併算定可へ変更されることになりました。
ただし、「服薬情報等提供料」の扱いは変更なく、引き続き同時算定不可であることにご注意ください。