はじめに
ご覧いただき誠にありがとうございます。
薬局経営コンサルタントの津留です。
さて、ただ今ご覧いただいている本コンテンツは、
「クローズアップ調剤行政」
と題した、シリーズコンテンツです。
調剤に関連する行政動向の中で、特に注目度の高いテーマを毎月ピックアップ解説致しております。
具体的には、
- 厚生労働省・内閣府・財務省を中心とした行政より発表される会議資料
- 通知、事務連絡等の資料 等
を取り上げています。
記事更新は主に月初めで、前月の発表資料を中心にご紹介いたしますので、毎月継続的にご覧いただければ、調剤に関する行政動向を把握するに役立ちます。
ぜひ継続してご覧いただければ幸いです。
尚、各種記事に関するご質問等、個別のご相談は薬局経営者研究会の会員企業様に限り無料で承っております。
興味がある方はぜひご入会を検討ください。
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2023年10月実施の会議・通知情報
クローズアップ調剤行政【2023年11月配信版】では、2023年10月の気になる行政動向を紹介します。
10月に実施された主な会議・発出された通知等の情報は次の通りです。
厚生労働省
- 2023年10月11日 オンライン資格確認等について|中央社会保険医療協議会 総会(第558回)
- 2023年10月18日 オンライン資格確認、個別事項(その2:がん・疾病対策)について|中央社会保険医療協議会 総会(第559回)
- 2023年10月27日 令和6年度診療報酬改定の基本方針について 他|第169回社会保障審議会医療保険部会
- 2023年10月30日 議論のとりまとめ、追加の議論について 他|第9回医薬品の販売制度に関する検討会
内閣府
- 2023年10月16日 規制改革推進会議の進め方について 等|第18回規制改革推進会議
- 2023年10月24日 改革工程表2022や骨太の方針2023に関する主な取組について|経済・財政一体改革推進委員会 社会保障WG
財務省
- 特に重要会議・通知情報は無し
2023年10月の気になる行政動向
診療報酬改定の個別項目についての議論は、中央社会保険医療協議会(以下、中医協)で行われます。
10月において、中医協での調剤に関連する内容はわずかで、
「個別事項(その2)がん・疾病対策について」における議論の中で、
がんの外来腫瘍化学療法における薬剤師の関わりについて言及された程度でございました。
その他、在宅医療現場で居宅同意取得型のオンライン資格確認を可能とするための、
療養担当規則の見直しに関する答申がございました。
詳細は割愛しますので、気になる方は以下より原文をご覧ください。
オンライン資格確認、個別事項(その2:がん・疾病対策)について|中央社会保険医療協議会 総会(第559回)
https://mc.nextit.co.jp/revision-of-fees/248634/
さて、今月ご紹介したい内容は、主に次の2点です。
1.令和6年度診療報酬改定基本方針案 調剤関連の追加項目
2.規制改革推進会議 医療分野の緊急・重要課題
議論次第では、薬局に大きく影響しうる内容のため、
ぜひ知っておいていただきたい内容です。
最後までご覧ください。
尚、本解説の注意点ですが、事実情報を中心にご紹介していますが、
筆者個人の見解も盛り込まれています。
見解部分については、正確な情報を保障するものではございません。
また、見解はあくまでも私見であり、
組織を代表した共通見解ではないことをご理解ください。
詳細については、ご自身で原文をご覧いただくことをお勧めいたします。
1.令和6年度診療報酬改定基本方針案 調剤関連の追加項目
まず、最初に取り上げるのは、
前号でも取り上げた「診療報酬改定 基本方針」に関する内容です。
10月以降も引き続き、社会保障審議会 医療部会・医療保険部会において、
令和6年度診療報酬改定基本方針の策定に向けた議論が行われています。
10月27日には医療保険部会、11月1日には医療部会が実施され、
会議資料に基本方針の新しい情報が掲載されました。
2023年10月27日 令和6年度診療報酬改定の基本方針について 他|第169回社会保障審議会医療保険部会
新情報はどんな情報か?
今回発表された資料で、追加・変更された点は次の通りです。
・「基本認識」の詳細文面
・「基本的視点」重点課題項目
・「基本的視点」の詳細文面
・「具体的方向性の例」の詳細文面
この項目名だけだとイメージがつきにくいと思いますので、追加点がわかりやすいよう一部原文を元にしたイメージ資料に色付け整理しました。
※次の図の赤字部分が新たに追加された内容です。
調剤関連情報の重要ポイント
①基本的視点「現下の雇用情勢を踏まえた人材確保・働き方改革等の推進」重点課題へ
ここからは、調剤に関連するであろう内容を絞り込んで紹介していきます。
まず、4つの基本的視点の中に記載のあった、
「現下の雇用情勢を踏まえた人材確保・働き方改革等の推進」の順番が変更され、
重点課題として設定されました。
これらは、処遇改善や働き方改革に関する内容で、薬局にとってプラスの内容と言って良いでしょう。
当初の案では、基本認識の冒頭部分に、
物価高騰、賃金上昇への対策について言及されていたものの、基本的視点には2つ目に設定されていました。
新たに提示された案では、
優先順位が高く設定され、処遇改善・働き方改革に向けた動きが一層重視される姿勢が見えます。
②処遇改善は、看護補助者等の医療従事者が中心に?!
続いて、基本的視点1~4の追加・変更点を見ていきます。
視点1では、物価対策等の内容が重点課題と設定され、
次の通り、医療従事者への処遇改善の必要性が言及されています。
「必要な処遇改善等を通じて、
医療現場を支えている医療従事者の人材確保のための取組を進めることが急務」
ただし、特に問題視している対象職種が次の通り示されています。
「特に医師、歯科医師、薬剤師及び看護師以外の医療従事者」
「このうち看護補助者については介護職員の平均よりも下回っている」
このように、看護補助等の医療従事者において処遇改善が図られるような方向性が示唆されました。
現在の仕組みの中で、一部職種のみの処遇改善となると、
診療報酬改定でどのような対応が考えられるかはまだ未知数です。
前回までの情報では、本テーマに関する内容は「医療従事者」のみの記述で、
具体的な職種までは言及されていなかったため、個人的に全体的な点数引き上げを予想していました。
一方で、新たな情報では一部の職種に限定した言及があるため、
最悪のケースは調剤において何も診療報酬上の対応が無いことも考えられます。
尚、視点1の具体的方向性の例の項目には、新しい内容は盛り込まれず前回案に沿った内容となっています。
③在宅医療、医療機関連携、重症化予防の項目追加 調剤への関連度は未知数
視点2の具体的方向性例では、次の項目が追加されています。
「患者の状態及び必要と考えられる医療機能に応じた入院医療の評価」
「外来医療の機能分化・強化等」
「質の高い在宅医療・訪問看護の確保」
この中で、調剤に関連しうる内容は「質の高い在宅医療・訪問看護の確保」ぐらいでしょうか。
とはいえ、この内容で「訪問薬剤管理」まで具体的に言及されているわけではないですし、
直近の中医協でまだ薬局における在宅関係の話がまだ議論に及んでいない状況です。
そのため、これらの情報からは調剤に関連するかどうかまだ未知数です。
また、視点3の具体的方向性例では次の内容が追加されています。
「患者にとって安心・安全に医療を受けられるための体制の評価」
「生活習慣病の増加等に対応する効果的・効率的な疾病管理および重症化予防の取組推進」
「地域の患者・住民のニーズに対応した機能を有する医薬品供給拠点としての役割の評価」が追加されています。
上の2つの追加された項目の詳細を見てみると、
「医療機関間の連携強化」「重症化予防」に関する内容が確認できます。
こちらも在宅医療と同様に調剤に関連する可能性はあるものの、
具体的な内容が明らかになっていないので現時点で調剤への関連度は読めない内容です。
④「医薬品供給拠点としての役割の評価」地域支援体制加算に関する言及か?
新たに追加された3つ目項目の
「地域の患者・住民のニーズに対応した機能を有する医薬品供給拠点としての役割の評価」は、
調剤に直接的に影響しそうな項目です。
従来の枠組みであれば、「地域支援体制加算」「連携強化加算」が関係しそうな気もします。
また、「役割の評価」とされているので、
機能を有すると判断されればプラスになる方向性の改定と、
全く読めなくもない記載です。
とはいえ、調剤だけに限る内容ではないので過度な期待は禁物ですが、
しっかり体制作りに力を入れている薬局においては、期待したい内容です。
⑤ 新たに「リフィル処方箋の活用」が言及
引き続き「医学的妥当性や経済性の視点も踏まえた処方を推進」も
最後に、視点5の具体的方向性例では次の内容が追加されています。
「医師・病院薬剤師と薬局薬剤師の協働の取組による医薬品の適正使用等の推進」
こちらは、「薬局薬剤師」の言及があるため、
調剤に関連する内容であるのは間違いないでしょう。
過去の報酬改定で、毎回のように記載されている「重複投薬」「ポリファーマシ-」「残薬」「長期処方」等の対応は真新しいものではないですが、今回新たに盛り込まれた「リフィル処方箋の活用」は注目ポイントです。
また、「医学的妥当性や経済性の視点も踏まえた処方を推進」の記載がございました。
こちらの内容は、前回2022年改定時の基本方針の中にも盛り込まれていた内容で、
結果的に見送りとなった内容ではありますが、いわゆる「フォーミュラリ」に関する言及であると予想できます。
フォーミュラリの定義は、厚生労働省資料には次の様に記載がございます。
我が国でのフォーミュラリの厳密な定義はないが、一般的には、
中医協 総-4-2「個別事項(その8)医薬品の適切な使用の推進について」 https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000863579.pdf
「医療機関等において医学的妥当性や経済性等を踏まえて作成された医薬品の使用方針」
を意味するものとして用いられている。
もっと平たく言うと、
・医療機関や特定の地域において
・あらかじめコストパフォーマンスの高い医薬品をリスト化し、
・そのリストから優先的に利用するルールにする
といった内容です。
※イメージしやすいように記載したもので、厳密な定義ではありませんので注意。
導入することにより、医療の質向上だけでなく、
後発医薬品の推進や、保有在庫の圧縮で医療費削減にも繋がります。
少しずつ広まりつあるフォーミュラリですが、
まだまだ一部の医療機関で限定されており、全国各地に広がっているとは言えない状況です。
これまでフォーミュラリを全国的に拡大させるために、
「点数化」が期待されていましたが、前回改定においては見送りとなっています。
2022改定においても注目したいポイントです。
2.規制改革推進会議 医療分野の緊急・重要課題
2つ目に取り上げるのは、「規制改革推進会議」で発表された内容です。
2023年10月16日 規制改革推進会議の進め方について 等|第18回規制改革推進会議
10月16日に第16回規制改革推進会議が実施され、規制改革の重要課題が発表されました。
その中に、医療分野に関する項目が設定されており、
直接的に薬局に影響しうる内容が課題として示されています。
資料は、次の章構成となっており、それぞれの章に医療分野の課題が示されています。
1.緊急に対応すべき課題
2.当面の重要課題
緊急課題に「オンライン診療普及・促進」「常勤・専任要件等の緩和」
規制改革推進会議においては、
緊急に対応していく必要がある点として「人不足への対応」を最初に掲げられています。
その一貫として、医療・介護分野においては、次の内容が課題として示されています。
【医療・介護】
第18回規制改革推進会議「規制改革の重要課題について(https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/meeting/committee/231016/231016general_0302.pdf)」より抜粋 ※特に薬局に影響しそうなポイントは、赤字にしています。
○オンライン診療のさらなる普及・促進(デイサービスや学校での受診、公民館などでの受診(医師非常駐のオンライン診療専用の診療所)の全国拡大、診療報酬上の評価の在り方見直し 等)
○地域における持続可能な在宅医療提供体制の構築
○診療報酬、介護報酬における常勤・専任要件等の緩和
○高齢者施設における人員配置基準の特例的な柔軟化、データに基づく自立支援・重度化防止に資する介護サービスの実現、地域内の複数種類の介護サービスに関する一体的マネジメントの実現
特に気になるポイントは、
「オンライン診療の更なる普及・促進」
「常勤・専任要件等の緩和」
についての言及です。
オンライン診療普及に向けた診療報酬上の評価見直し
オンライン診療については、着実に普及拡大していると思いますが、
まだまだ対面医療が中心で、その要因の1つに診療報酬上の評価が考えられます。
オンライン診療は、患者側の利便性向上は図られる一方で、
診療側にとっては、診療内容が限定的になり報酬が下がることを懸念し、
消極的になっている実態があるでしょう。
一方で、患者側においては、
利用したことがある方にとっては、便利で繰り返し利用される方が多いデータが示されていますが、
実際には、初回の利用時に二の足を踏む方が多数いらっしゃるのではと思います。
筆者の私見にはなりますが、
供給側の診療側が取り組みやすくする制度改定は必要でありながらも、
需要側の患者にも何かしら動機付けできるようなインセンティブが必要ではないかと感じます。
常勤・専任要件等の緩和
薬局における人員配置基準には、
かかりつけ薬剤師・地域支援体制加算の施設基準、
地域連携薬局・健康サポート薬局の要件が挙げられます。
特に大手の薬局チェーンからは、
人事異動に制限をかける在籍期間に関する要件の緩和要望がございますが、
果たして規制緩和の方向性に進むかどうかが気になります。
当面の重要課題に「コンビニ等での医薬品販売」
そして、緊急課題項目と別立てで、
「来年年央中の答申・規制改革実施計画策定につなげていく」として
複数の重要項目が設定されています。
医療においては、次の内容が言及されています。
「医薬品や医療サービスへのアクセス等(オンライン診療、コンビニ等での医薬品販売)、
タスク・シフト/シェアの推進、医療データの利活用法制等の整備」
コンビニでの医薬品販売については、
報道では、他の検討会で検討されているデジタル技術を活用した遠隔販売を指しているようで、
有資格者が現場に居なくとも、遠隔で情報提供や医薬品管理をしようという趣旨の内容です。
現在でも一部地域で、登録販売者を常駐させて医薬品を販売するコンビニがありますが、
規制緩和されると有資格者の常駐が不要となり、全国各地のコンビニで医薬品販売が当たり前になる可能性が高いでしょう。
※検討会での議論の詳細を確認したい方は以下リンク先より原文をご覧ください。
https://mc.nextit.co.jp/revision-of-fees/248168/
終わりに
今月の記事では、前月に引き続き「基本方針」を取り上げ、加えて規制改革推進会議の内容がございましたので、
非常にボリュームの多い記事になりました。
とはいえ、両者ともに重要な内容のため、ぜひ押さえておいて頂ければ幸いです。
11月には、財務省秋建議に関する内容や、中医協での調剤に関する具体的な検討内容が出てくると予想できます。
また、新しい情報が出てきましたら、続報で情報提供いたします。
今月の「クローズアップ調剤行政」は以上です。
次号もお楽しみにお待ちください。
(作成:株式会社ネグジット総研 経営コンサルタント 津留隆幸)
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