新型コロナ「5類」感染症移行 薬局で変わることは?  ~クローズアップ調剤行政【2023年4月配信版】~

はじめに

調剤に関連する行政動向の中で、注目度の高いテーマを解説するシリーズ「クローズアップ調剤行政」をお届けしています。

本記事シリーズでは、

  • 厚生労働省・内閣府・財務省より発表される会議資料
  • 通知、事務連絡等の発表資料

を中心に調剤に関連する内容をピックアップ・解説します。

毎月継続的にご覧いただければ、調剤に関する行政動向をおおよそ把握できるようなコンテンツを目指します。ぜひ継続してご覧いただければ幸いです。

尚、各種記事に関するご質問等、個別のご相談は薬局経営者研究会の会員企業様に限り無料で承っております。興味がある方はぜひご入会を検討ください。


2023年3月実施の会議・通知情報

2023年2月に実施された主な会議・発出された通知等の情報は次の通りです。

厚生労働省

内閣府

財務省

  • 特に重要会議等はなし

2023年3月の気になる行政動向は?

2023年3月に実施された中央社会保険医療協議会総会では

  • 新型コロナウイルス感染症 5類感染症移行に伴う診療報酬上の取扱い

について多くの時間をかけて議論されています。

そこで、2023年3月版のクローズアップ調剤行政は、新型コロナ「5類」感染症へ移行に関する話題をお届けいたします。

ぜひ最後までご覧ください。

新型コロナウイルス感染症 「5類」感染症移行に伴う診療報酬上の取扱い

政府は、2023年1月20日に新型コロナウイルス感染症を、季節性インフルエンザと同じ「5類」の感染症に分類することを決定しています。

この方針は、5月8日から実施されます。

本決定を受けて、中央社会保険医療協議会総会では、5月8日以降の診療報酬上の扱いについて多くの時間を割いて議論されてきました。

最終的に取りまとめられた内容は、3月31日に事務連絡で発信されています。

そもそも現行の「2類」時の特例は?

これまで新型コロナウイルス感染症がまん延してから、様々な特例措置がございました。

現在も継続しているものもあれば、既に終了しているものもあります。

「5類」移行に関する事務連絡の内容を触れる前に、現行でどのような特例があるかをおさらいしておきましょう。

2023年4月現在で継続しているコロナ関連の特例を整理いたします。

● 電話や情報通信機器を用いた服薬指導の特例的な取扱い

(いわゆる「0410対応」)

オンライン服薬指導に関するルールとして、当初の「0410対応」が運用される以前は、「初回は対面」等の様々な制限が設定されていました。

しかし、この制限は令和4年4月の薬機法改正で緩和され、「0410対応」のルールがほとんどスライドされています。

現在も引き続き「0410対応」として継続されているのは、

通信手段が「電話(音声のみ)でも可」

という点です。

「0410対応」が終了すると、

映像を伴ういわゆるビデオ通話の仕組みが必須となります。

(以下、画像をクリックすると新しいタブで拡大表示されます。)

令和4年3月10日 第2回薬局薬剤師の業務及び薬局の機能に関するワーキンググループ「オンライン服薬指導について」より抜粋(https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/000910730.pdf)

● 自宅・宿泊療養者への緊急/電話等による服薬指導への特例拡充

自宅・宿泊療養中の新型コロナウイルス感染症患者への調剤については、報酬上の評価が設定されております。

医師の指示の元、緊急訪問による対面の服薬指導およびその他の必要な薬学的管理を行った場合は、

在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料1 500点

同じ調剤でもオンラインで服薬指導を実施した場合は、

在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料2 200点

と特例で高い点数を算定できる扱いとなっています。

● 自宅・宿泊療養者の服薬状況の医療機関への文章による情報提供の特例

医療機関への服薬状況等についての提供について、他の患者と同じように服薬情報等提供料1(30点)が算定できますが、通常は月1回の上限が設定されています。

自宅・宿泊療養中の新型コロナウイルス感染症患者への対応は、特例で上限(月1回)を越えて算定可

の扱いとなっています。

令和3年9月28日 厚生労働省医政局総務課 事務連絡「「感染防止対策の継続支援」の周知について」(https://www.mhlw.go.jp/content/000836869.pdf)別紙より抜粋

5月8日移行の「5類」移行後の診療報酬上の取扱いは?

2023年3月31日付けの事務連絡では、5月8日の「5類」移行後の診療報酬上の取扱いについて記載があります。

(参考)新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけの変更に伴う新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて|厚生労働省保険局医療課 事務連絡

調剤においては、概ね継続されているものもありますが、細かい変更や追加の内容が盛り込まれているのでご注意ください。

● 在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料、服薬情報等提供料の扱いは概ね維持

前述の

・緊急訪問による薬剤交付で

 対面での服薬指導による「在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料1(500点)」

 オンラインでの服薬指導による「在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料2(200点)」

・算定上限(月1回)を越えた医療機関への文章による情報提供「服薬情報等提供料1(30点)」

の算定について、点数自体の扱いは継続されます。

しかし、対象患者は、自宅・宿泊療養者ではなく、

「新型コロナウイルス感染症と診断された患者

(新型コロナウイルス感染症から回復した患者を除く。)」

となりますのでご注意ください。

【通則】
○ 本事務連絡において、「新型コロナウイルス感染症患者」とは、新型コロナウイルス感染症と診断された患者(新型コロナウイルス感染症から回復した患者を除く。)をいう

(令和5年3月31日 厚生労働省保険局医療課 事務連絡「新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけの変更に伴う新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて」より抜粋)

● 高齢者施設等の患者でも算定可へ

これまで、医師または薬剤師の配置義務がある

介護老人福祉施設等の高齢者施設の患者様への対応は保険算定できませんでした。

しかし、今回新たに

高齢者施設等においても算定が可能

の扱いとなっています。

2.高齢者施設等における調剤の特例
① 保険薬局において、介護療養病床等に入院している者又は介護医療院若しくは介護老人保健施設に入所する新型コロナウイルス感染症患者に対して、保険医療機関から発行された処方箋に基づき調剤する場合において、処方箋を発行した医師の指示により、当該保険薬局の薬剤師が当該施設を緊急に訪問し、当該患者又は現にその看護に当たっている者に対して対面による服薬指導その他の必要な薬学的管理指導を実施し、薬剤の交付した場合には、在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料1(500 点)及び薬剤料を算定できる。

(中略)

② 保険薬局において、地域密着型介護老人福祉施設又は介護老人福祉施設に入所する新型コロナウイルス感染症患者に対して、保険医療機関から発行された処方箋に基づき調剤する場合において、処方箋を発行した医師の指示により、当該保険薬局の薬剤師が当該施設を緊急に訪問し、当該患者又は現にその看護に当たっている者に対して対面による服薬指導その他の必要な薬学的管理指導を実施し、薬剤を交付した場合には、在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料1(500 点)を算定できる。

(令和5年3月31日 厚生労働省保険局医療課 事務連絡「新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけの変更に伴う新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて」より抜粋)

●「0410対応」は一時的に継続されるが7月末で廃止へ

これまで「0410対応」として可能となっていた電話服薬指導は、5月8日以降も引き続き可能となっています。

しかし、それは一時的なもので、

2023年7月31日をもって終了

することが決定しています。

終了後は、ビデオ通話の仕組みがなければ、遠隔での服薬指導はできなくなるのでご注意ください。

3.電話や情報通信機器を用いた服薬指導等に係る特例
(1)電話や情報通信機器を用いた診療等に係る特例の期限について電話を用いた服薬指導等に関する特例については、以下(2)のとおりであり、当該特例については、令和5年7月31日をもって終了する

(以下、省略)

(令和5年3月31日 厚生労働省保険局医療課 事務連絡「新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけの変更に伴う新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて」より抜粋)

● 薬局におけるコロナ治療薬の交付は、服薬管理指導料が2倍に

「5類」へ移行すると、薬局内でのコロナ患者対応が考えられます。

そこで、対象患者へのコロナ治療薬の交付については新たな評価が設定されています。

対象患者へ必要な服薬指導を行えば、

服薬管理指導料(59点or45点)が2倍

に相当する点数を算定することができるようになります。

ただし、

要件に交付するコロナ治療薬の「医薬品リスク管理計画(RMP)」の理解・活用等による

十分な説明・指導等が要件に盛り込まれてることを十分ご注意ください。

③ 保険薬局において、新型コロナウイルス感染症患者に対して新型コロナウイルス感染症治療薬を交付するに当たり、副作用、併用禁忌等の当該医薬品の特性を踏まえ、当該医薬品に係る医薬品リスク管理計画(RMP)を理解し、RMP に基づく情報提供資材を活用するなどし、当該患者に対して当該薬剤の有効性及び安全性に関する情報を十分に説明した上で、残薬の有無を確認し指導するなど当該薬剤に関する指導を行った場合には、服薬管理指導料の「1」又は「2」の 100 分の200 に相当する点数(118 点、90 点)を算定できる

(令和5年3月31日 厚生労働省保険局医療課 事務連絡「新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけの変更に伴う新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて」より抜粋)

事務連絡の対応を薬局内で確認しよう

「5類」変更を受けて、特に内科の処方箋を多数応需する薬局においては、十分事務連絡の内容を理解し、早期に備えることをお勧めします。

事前に準備が必要なものは、様々考えられます。

例えば、

  • コロナ治療薬における医薬品リスク管理計画(RMP)および関連資材の把握

 (参考)PMDA 「RMP提出品目一覧」 https://www.pmda.go.jp/safety/info-services/drugs/items-information/rmp/0001.html 

  • 介護保険施設からのコロナ患者対応依頼があった場合の対応確認
  • 電話服薬指導を定期的に実施する患者様へ、オンライン服薬指導の啓発 等

が考えられます。

上記は、あくまでも一例です。しっかりと事前に薬局内で対応策を検討されることをお勧めいたします。

おわりに

2023年3月に発表された調剤関連の行政動向について、特に知っていただきたいポイントとして「新型コロナウイルス感染症「5類」移行」に関する話題を取り上げました。

今回の記事は以上です。次回は4月の行政動向解説記事を予定しています。ぜひご覧ください。

(作成:株式会社ネグジット総研 経営コンサルタント 津留隆幸)

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