医薬業界における診療所の動向について
ここでは地域医療の川上となる診療所にスポットを当て、様々な視点からその現在を改めて整理し、当コラムをお読み頂ける皆様の経営のヒントをご提供できればと考えております。さて、第1回目のテーマは「医薬業界における診療所の動向について」です。我が国日本では、超高齢社会にも耐えうる医療提供体制を構築するため、2014年(平成26年)6月に成立した「医療介護総合確保推進法」によって、「地域医療構想」が制度化されました。地域医療構想によって、各地では病院に必要となる医療機能が見直され、これに合わせ診療所が担う地域医療の姿も変わりつつあります。まずは、超高齢化社会に向かい、近年の診療所数がどのように変化して来たかを時系列で見ていきます。
Q1.現在の我が国の診療所数は?近年はどう変化してきた?
厚生労働省「医療施設調査・病院報告令和2年度データ」より
上記は、医療施設調査における一般診療所数(有床・無床含む)とその増減を時系列で表したものになります。一方、このデータの取り扱いは十分に留意が必要で、「開設」の数すべてが新たに開設した診療所数ではなく、また「廃止」の数すべてが新たに廃止した診療所数ではありません。これらには「医療法人化(個人の診療所を廃止し、医療法人を開設した)」や、「事業承継による先代経営者による廃止と、後継者による開設」した場合が含まれています。そのため、実際にはこれらを除けば、毎年約2000件ほどの診療所が新規開設してきたと言われています。しかし、上記の総数の(増減)をご覧頂くとお分かりの通り、その反面、近年の競合医院との競争激化や大都市圏以外の患者数の減少影響等により、約半分以上に相当する純粋な廃止(倒産だけではない)も発生している業界となっています。
Q2.現在の診療所の診療科割合は?
下記データは上記と同じく、医療施設調査による診療所の診療科目別に見た施設数と割合を表した令和2年10月1日時点での調査結果です。
予想通り、10万件超にのぼる診療所の内、「内科」が6割強を占める結果となりました。続いて多い診療科は「小児科」であり、約18%を占めています。その他、「外科」「整形外科」「皮膚科」等が約12%ほどとなっています。
やはり医療ニーズの高い内科が最も多い結果となりましたが、近年においては都市部等の人口密集地での競合医院も多く、単純内科での新規開設は、経営戦略上非常に難しいものとなってきました。
Q1での毎年約2000件に上る新規開設においても、開設すれば地域の診療所としてうまく経営が続けられるという時代は過去となり、今後は如何にして競合医院との差別化を図り「選ばれる診療所」となれるか、そのための経営努力が必要な時代となっています。