勤務医数から見る診療所開院への意向と動機
前回から新たに始めてまいりました当シン・処方元回帰シリーズですが、第1回目は診療所開院においては、”開院直後の集患戦略や、競合他院との差別化が過去以上に求められる時代となった”旨の内容をお伝えさせて頂きました。とはいえ、依然として、毎年約2000件近くの新規開院を望む声は存在しています。そこで、第2回目は「勤務医数から見る診療所開院への意向と動機」を整理し、読者の皆様へ経営のヒントをご提供できればと考えております。
Q1.勤務医師は、いつ頃から診療所開院を考え始めるのか?
下表は、厚生労働省「令和2(2020)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」から、年齢階級、施設の種別にみた従事医師数と平均年齢を表したものになります。中でも、医育機関附属の病院(大学病院等)で、30~39歳の医師が24,229人(構成割合44.4%)とその多くを占めているものの、40~49歳になった際には、13,464人(構成割合23.4%)と減少しています。これは、40歳代を契機に独立開院する医師が多いことを示しています。
厚生労働省「令和2(2020)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」より
Q2.勤務医師における診療所開院(独立)の動機は?
続いて、Q1の独立開院に際しての動機ですが、以下のような声が主に挙がっています。
もちろん、複数の動機に該当する場合もありますが、概ね「経済面」「身体的限界」「やりがい」「余暇時間」「事業承継」などによる独立開業が多い模様です。ハードワークで知られる医師の働き方の改善ついては、医療制度全体で取り組まなければならない課題であり、他業種へのタスクシフト/シェアの早期実現が望まれています。
Tips~医師のタスク・シフト/シェアの議論まとめと今後~
上記の医師の過酷な働き方の改革を目指し、タスクシフト/シェアを推進に関する検討会の議論が令和2年12月23日にまとまり、厚生労働省より公表されました。具体的な推進の方策として、「看護師からその他職種のタスクシフト(そもそも医師から看護師への業務分担ができない状況のため)」「管理者向けのマネジメント研修」「ICT機器導入などによる業務全体の縮減」等々が挙げられています。また、2024年4月には改正医療法が施行され、①時間外労働の上限規制として、A基準(診療従事勤務者に適応される水準)は、年間960時間、月100時間となる等が定められ、②時間外割増賃金率のアップとして、1か月60時間を超える法定時間外労働に対しては、50%以上の割増賃金を支払わなければならなくなる等となります。ただし一方で、地方病院から医師が引き上げられたり、病院勤務医師の一般病院での副業ができなくなるなど、懸念点は山積しており、病院経営においても変化の時代が訪れている状況です。