受け手がハラスメントと感じれば、ハラスメントだ!」と思っていませんか?

薬局経営コンサルティング

 「改正労働施策総合推進法」におけるパワーハラスメントの規定は2022年6月から中小企業にも適用され、パワーハラスメント対策の実施は医療機関や薬局においても原則義務化されています。こうした動きの中で、弊社に対しても医療機関・保険薬局において「パワーハラスメント」の相談が近年増加しています。その多くの内容が、部下に「それハラスメントですよ」と言われてひるんでしまい、適切な指導ができなくなった管理者が増えているというものでした。
 この背景としては「パワーハラスメント」という言葉の意味を正確に理解しておらず、
 「受け手がハラスメントと感じたらハラスメントだ」といった思い込みが多くあるようです。※実際に最近放映されたTV番組の中で、このような発言をそのまま誤解を生むような状況で放送しているケースが複数みられました。 

 

 より詳しい事情を聴くと「ハラスメント」という言葉をどのレベルで使っているかの混乱があることが見受けられます。実は法的に定義されているハラスメントは、「パワーハラスメント」「セクシャルハラスメント」「マタニティ&パタニティ(妊娠・出産・育児休業関係)ハラスメント」「ケア(介護休業)ハラスメント」だけなのです。(カスタマーハラスメントが条例等での規定が検討中です。)これらをみると「受け手がハラスメントと感じただけでハラスメント」ということは決してありません。例えばパワハラについては次のような要件があります。

 ①職場にて、優越的な関係を背景とした言動
→上司の部下に対する言動、知識や経験に優越性を持つ労働者のそうでない労働者に対する言動、集団の個人に対する言動などが該当。(決して上司からだけではありません。)


 ②業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動であること
→合理的な業務指示や指導の範囲内であれば、該当しません。


 ③労働者の就業環境を害する言動であること
→典型的には、パワハラの6類型(下記の表)に当たる行為が該当。

この3つの要素に該当しなければ主観的に「受け手がパワハラだと感じ」てもパワハラには当たりません。※もちろん表の例だけだと、判断の付きにくいケースもあり得ますが、はっきりと判断できるケースも多くあると考えています。

 みなさんの組織ではいかがでしょうか?このような視点を管理者や一般社員において共有できているでしょうか?問題が起こってからこのようなことを伝えてもうまくいかないことが少なくありませんので、制度的に社員に啓発する取り組みが重要です。(法的にも全社員へのパワハラへの対応方針の周知・啓発義務があります。)経営課題や業務の円滑遂行のために、職場の心理的安全性確保の最低条件として、ぜひご検討ください。


 ネグジット総研では、これらを踏まえ●厚労省・法律の定義を基づく「パワハラ」の意味の正確な理解的確な部下指導実施&環境整備のポイント、を一方的な説明だけでなく、演習を取り入れたオンライン講座を企画しています。ご関心のある方は、下記リンクをご参照ください。皆様のご参加をお待ちしています。

 パワーハラスメント対策講座


2024.08 株式会社ネグジット総研 経営コンサルタント 久保 隆