目標管理を人事評価・処遇に活用するために!・・・目標管理設計のポイントを押さえる!

評価実施の時期にあたり、その運用に関するテーマについて取り上げます。人事評価を進める上で、目標管理を活用する組織も珍しくありません。しかしながら、その運用を適切に行わなければ、却って組織課題の推進に齟齬をきたしかねないのが、目標管理と人事評価・処遇との連動です。


事例を見てみましょう。ある薬局では今年度の目標管理のテーマを「かかりつけ薬剤師の推進」とし、定量目標をその算定率としました。するとA店では、若手社員が「患者のアウトカムの向上を図る」ことよりも、「いかに効率的に自分の担当の算定数を確保するか」といったことに意識がいくようになり、「手間のかかる患者には積極的に対応しない」 「譲り合いが生まれる」といった事象が生じたのです。こうなると本人の評価は上がるかもしれませんが、本来の意図からは乖離してしまいます。


これは極端なケースですが、目標管理を人事評価・処遇に反映させるということは、個々の社員の直接的な利害に影響を与えますので、運用の仕方を誤ると課題遂行や組織風土をおかしくしかねないのです。

目標管理の目的は、「組織のリーダーが、メンバーに自ら目標を設定することを促し、目標達成のために自律的に仕事を進める風土を醸成し、そのことで組織課題の推進を図ること」なので、この目的に沿うように自組織の状況を踏まえて制度設計をしていくことが重要です。そのために議論しておくべきポイントとして、次の点をお勧めします。

●適用単位をどうするか?

適用単位をチームとするか、個人とするか、両方とするかが、最初の論点です。人事処遇に活用する上では個人単位の評価も入れたいところですが、医療機関・薬局での課題はチーム単位で進められることが多く、個人で評価をしてしまうと弊害が生じることが多くあるので、その点を考慮して自組織でどうするかを検討します。

●テーマ・目標選定のルール設計をどうするか?

目標管理の目的の記述の際に示したように、目標管理は「組織課題」の推進と「自ら目標を設定する」ということをどうバランスよく両立させるかがミソとなります。自組織の成熟度合を鑑み、そのバランスをとるように決めていきます。

●制度レビュー設計をどうするか?

目標設定フェーズがなされるとその達成促進が必要です。そのための働きかけを制度的に実施するのか、自律性に委ねるのか。制度的に取り組むのなら、対象・頻度をどうするかを検討します。

●共有ルールをどうするか?

進捗状況の共有・見える化は重要です。そのルールの設計も不可欠です。

評価フィードバックをどうするか?

目標管理において育成フィードバックは不可欠です。一定の時点で俯瞰して振り返り、その学びと次への課題を明確にします。処遇のフィードバックを誰がどうやるかも自組織の成熟度を見て決定しないと不平不満を生む恐れがありますので、注意して検討する必要があります。


皆さんの組織では、目標管理を人事評価・処遇と連動されているでしょうか?もし、導入されておられるなら上記の論点を踏まえて設計されているか検証をしてみてください。


2023.06 株式会社ネグジット総研経営コンサルタント 久保 隆

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