「クローズアップ調剤行政」シリーズ記事を新たにスタートします
新しくブログ企画で、調剤に関連する行政動向を毎月整理して記事にしてお届けする「クローズアップ調剤行政」シリーズの記事企画をスタートすることにしました。
具体的には、厚生労働省・内閣府・財務省より発表された各種会議資料や事務連絡等の行政発表資料の中で、調剤に関連する内容をピックアップ・解説します。毎月継続的にご覧いただければ、調剤に関する行政動向をおおよそ把握できるようなコンテンツを目指します。ぜひ継続してご覧いただければ幸いです。
尚、本記事に関するご質問等、個別のご相談は薬局経営者研究会の会員企業様に限り無料で承っております。興味がある方はぜひご入会を検討ください。
2022年11月実施の会議・通知情報
2022年11月に実施された会議および主な議題は次の通りです。
厚生労働省
- 2022年11月11日 令和4年度第二次補正予算案(保険局関係)の主な事項|第157回社会保障審議会医療保険部会
- 2022年11月14日 【介護】地域包括ケアシステムの更なる深化・推進について|第101回社会保障審議会介護保険部会
- 2022年11月16日 診療報酬改定結果検証部会からの報告について|中央社会保険医療協議会 総会(第532回)
- 2022年11月17日 医療保険制度改革について|第158回社会保障審議会医療保険部会
- 2022年11月28日 全世代型社会保障構築会議について(報告)|第103回社会保障審議会介護保険部会
- 2022年11月28日 かかりつけ医機能について 他|第93回社会保障審議会医療部会
- 2022年11月30日 令和4年度事業 中間報告 他|第16回 高齢者医薬品適正使用検討会
内閣府
- 2022年11月02日 マイナンバー活用による生活・社会保障の向上|令和4年第13回経済財政諮問会議
- 2022年11月07日 訪問看護ステーションに配置可能な薬剤の対象拡充について|規制改革推進会議 第2回 医療・介護・感染症対策WG
- 2022年11月11日 社会保障分野における改革工程表2021の進捗状況等 他|経済・財政一体改革推進委員会 社会保障WG
- 2022年11月24日 全世代型社会保障構築会議の論点整理(各分野の改革の方向性)|全世代型社会保障構築本部(第4回)
財務省
2022年11月 行政動向 ピックアップ解説
2022年11月は、比較的多くの会議実施がありました。その中でも、特に気になるポイントを弊社コンサルタント視点で内容をピックアップして解説いたします。
財政制度等審議会 秋の建議
例年秋に発表される財政制度審議会の建議が、今年も予定通りに発表されています。
2022年11月29日 令和5年度予算の編成等に関する建議|財政制度等審議会
例年の診療報酬改定が控える年の秋建議では、調剤報酬の引き下げを狙った厳しい指摘が盛り込まれるのが通常です。しかし、来年度は診療報酬改定の間の年であるため、昨年の秋建議ほど厳しい内容は言及されておりません。直接的に調剤に関連する内容について、以下抜粋いたします。
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薬価改定 完全実施を求める
調剤に関して言及されているのは、「リフィル処方箋」「薬価改定」「既存医薬品の保険給付範囲の見直し」程度です。その他一部オンライン資格確認関連の情報が記載されており、「薬価改定」に関する内容に複数のページ数を割いて記載されています。
具体的には、薬価改定を一部に限った改定ではなく、すべての品目に対して行う「完全実施」等により、薬価財源を更に圧縮すべきである旨の意見が示されています。これは2年前の改定の合間年である、令和3年度予算の建議と比較するとそこまで大きな変化はないように見受けられます。
後発医薬品に関する言及削除、リフィル処方箋が追加へ
「薬価改定」以外の項目においても、2年前の建議と見比べてみます。大きく異なる点は、「後発医薬品」「リフィル処方箋」についてです。
まず「後発医薬品」に関してです。後発医薬品に関する内容は、今回の建議で完全に削除されています。2年前では、新目標についての言及やフォーミュラリに関する内容が記載されていましたが、改定の合間年で対応できる部分がなく、一旦落ち着いたといっても良いのでしょうか。
続いて「リフィル処方箋」に関してです。リフィル処方箋は令和4年度報酬改定でようやく新設されました。しかし、まだまだ普及されていないという考えなのか、日本保険薬局協会のアンケートデータを示し、「制度の普及促進に向けて周知・広報を図るべき」という意見を示しています。
「かかりつけ医機能のあり方」に関する議論
秋建議にも記載されている内容で、かかりつけ医機能のあり方に関しての議論が、今月は様々な会議で取り上げられています。財務省秋建議の他に、内閣府の経済財政諮問会議、そして厚労省・社会保障審議会で取り上げられています。直接的に報酬等には影響するものではありませんが、医療提供体制全体に関わる内容のため、把握しておくことをお勧めいたします。
2022年11月28日 かかりつけ医機能について 他|第93回社会保障審議会医療部会
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今後起こりうる感染症発生・まん延時や人口構造の変化を対応していくために、地域医療の提供体制を見直すべく「かかりつけ医」を軸にした医療提供体制についての検討が進められています。医療連携について、これまでの急性期→回復期→慢性期・在宅の垂直連携(タテ連携)の推進から、かかりつけ医、地域包括ケアを支える病院・有床診療所、介護等の水平連携(ヨコ連携)を推進強化を図ろうという考えのようです。検討にあたって、かかりつけ医の機能を発揮できる制度整備をどうするか?という点を中心に、現在議論がなされています。
厚生労働省の骨格案として、かかりつけ医機能が発揮される制度の内容として、次の2点を挙げております。
- 医療機能情報提供制度の拡充
- かかりつけ医機能報告制度の創設による機能の充実・強化
これらを制度整備することで、
- 患者がかかりつけ医選択に必要な情報を拡充し
- 多様な医療ニーズに応えられるよう、不足する機能を強化
することを狙っているようです。
医療機能情報提供制度においては、
国民・患者視点でわかりづらい内容を改め、次のような項目イメージに内容を改める案が示されています。
かかりつけ医機能の充実に向けたイメージ案が記されています。まず、医療機関が都道府県へ「外来医療の提供(幅広いプライマリーケア)」や「休日・夜間の対応」等の提供状況を報告します。その報告の中で、不足している機能を強化するために、都道府県は地域の協議の場において、次のスライドに挙げられた方策例のような内容を検討・公表するという案が示されています。
患者⇔医療機関の間でかかりつけの関係の確認のために、書面交付と説明をする案が示されています。現在の「かかりつけ薬剤師」と似たような制度イメージのように見受けられます。
今回示された案の整備スケジュールも提示されています。
年内に医療部会で制度整備の基本的な取りまとめられ、「医療機能情報提供制度の拡充」「かかりつけ医機能報告制度の創設による機能の充実・強化」ともに、令和5年中に制度内容検討、令和6年より何かしらの形でスタートするイメージです(詳細は次のスライドをご覧ください)。
今回提示された資料では、一切保険薬局や薬剤師に関する言及はございませんでした。途中、「かかりつけ医機能の定義」として「身近な地域における日常的な医療の提供や健康管理に関する相談等を行う機能」との記載がございます。特に「健康管理に関する相談」については、「かかりつけ薬剤師」においても求められる機能ではないかと個人的には考えます。両者のかかりつけ機能連携に関する議論が非常に興味深い点です。
関連YouTube動画
今回の記事は以上です。次回は12月の解説記事を予定しています。ぜひご覧ください。
(作成:株式会社ネグジット総研 経営コンサルタント 津留隆幸)