「かかりつけ」の取り組みは「ノルマ化」ではなく、アウトカムを「明確」に!
(薬局経営コンサルティングブログ)

「かかりつけ」の取り組みにおける「アウトカム明確化」の重要性

2025年も残りわずかとなり、次期診療報酬改定に向けた議論も基本方針が固まり、諮問を来月に控えています。
こうした中、11月28日の中央社会保険医療協議会(中医協)では「調剤(その2)」が議題として取り上げられました。その「現状と課題②」において、
「かかりつけ薬剤師指導料は、通常の服薬管理指導料より高い点数が設定されている一方で、業務ノルマが設けられている薬局のうち、約半数で算定回数や同意件数に関するノルマが存在している」と指摘されています。この記載からは、「かかりつけ薬剤師」制度そのものの在り方について、見直しが検討される可能性を感じさせる論調が読み取れます。  
 


ここで気になったのが、「ノルマ」という言葉の使われ方です。辞書(コトバンク)によれば、ノルマとはロシア語のnormaに由来し、「一定時間内に果たすよう個人や集団に割り当てられる標準作業量」あるいは「各人に課せられる仕事などの量」とされています。
すなわち、本来は一定期間内に達成すべき数量や成果として、組織や上位者から割り当てられる基準を指す、中立的な概念です。  
 

しかし、日常的な文脈においては、「達成できなければ不利益が生じる義務的な目標」という強いニュアンスを伴って用いられることが少なくありません。
営業ノルマ、売上ノルマ、動員ノルマといった言葉が示すように、「達成を強制される目標」という否定的な含意が定着しているのが実情です。
そのため、一般的な意味でのノルマは、形式的な達成や帳尻合わせを目的とした取り組みに陥りやすい、というイメージを伴います。中医協の問題意識も、この点にあるのではないでしょうか。

 

もっとも、別のスライドでは「かかりつけ薬剤師」の効果を示す患者アンケート結果も紹介されており、制度そのものの価値が否定されているわけではありません。そう考えると、本質的な論点は「かかりつけ」の取り組みを目標化すること自体に問題があるのではなく、ノルマ化によって形式要件を満たすことが目的化し、患者アウトカムの創出につながっていない点にあると考えられます。

 

本来、「かかりつけ」に期待されているのは、患者の服薬理解や治療継続を促し、薬剤の安全性・効果性を図り、生活の質の向上といったアウトカムの実現です。
これらが適切に評価されないまま、同意数や算定件数のみが強調されれば、制度の形骸化を招くのは避けられません。アウトカムの創出を調剤報酬上どのように具体化するかは容易ではありませんが、AI薬歴の導入など環境整備が進む中で、工夫次第で十分に可能性はあるでしょう。

今後、どのような要件や評価指標が提示されるのか、期待と緊張感をもって注視していきたいと考えます。


 
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2025.12 株式会社ネグジット総研 経営コンサルタント 久保 隆