「やった者」に報いる賃金制度構築のポイント

令和4年度改定への対応も一通り進めてこられた時期かと存じますが、「薬局薬剤師の業務及び薬局の機能に関するワーキンググループのとりまとめ」の発表や23年1月の「電子処方箋の開始」23年4月の「オンライン資格確認の義務化」など経営環境変化への対応は待ったなしとなっています。

そうした中、私どもへの相談が増えてきているのが人事処遇制度の見直しです。

その背景には、変化に対応するための人材の育成や「やった者」に報いる体制づくりの要請が見受けられます。そこで今回は、「やった者」に報いる賃金制度構築のポイントを取り上げます。

「やった者」に報いる賃金制度を構築にはまず、「やった」を明確にすることが不可欠です。
「やった」とは「やってほしいこと=経営方針・経営課題の推進等をやってくれたこと」で、評価項目・評価基準でこれを明確にすることが前提となります。

次に、その「『やった者』に報いる≒思い切った報酬で遇する」ためには、「その実施ができる仕組みを入れること」とそれを「既得権にしないこと」が求められます。というのも、「今年やった者」が必ず「来年もやってくれる」とは限らないからです。(※来年もやってくれれば、その際に遇すれば大丈夫です。)

そのためには、変動費的要素の導入が不可欠であり、具体的には月次賃金、賞与、別枠のインセティブ表彰制度の3つの切り口で検討していきます。

●月次賃金の変動費化は限定的に一定水準以上の報酬者を対象に!

月次賃金は生活給的要素が強く、一旦上がったものを下げるにはハードル高いものです。特に若手社員等に導入すると採用難や人材流出につながりかねません。導入するのなら、等級・役職・年齢等が上位の一定水準の報酬以上のスタッフが対象となります。やりかたは、 降給ピッチ設計・ 等級の降格運用 ・ 洗替賃金表(図参照)の導入などが挙げられます。

●賞与はベース部分と評価反映部分に区分で! 

変動費化の導入がしやすいのが賞与です。すでに取り入られている薬局・チェーンも少なくないでしょう。ベース部分と評価反映部分に区分し変動費化を図ります。評価反映部分のウェートや変動範囲を工夫することで、ソフトランディング的な導入もドラスティックな運用も可能です。

●モチベーションアップには、インセンティブ表彰制度の活用も視野に! 

ご存知の方も多いかと思いますが、一般的に賃金制度は「動機づけ要因」ではなく「衛生要因(不満足除外要因)」と言われています。その点、結果を全社に「見える化」する表彰の実施等も併せた「インセンティブ表彰制度」は、「達成」「存在感」「承認」といった「動機づけ要因」と結び付けることが可能です。「やった者」に報いる賃金制度の検討を考えておられましたら、これらのことを踏まえて、自店・自チェーンにあった賃金の変動費化を検討することが求められます。ぜびご参照してみてくださいませ。

2022.08 株式会社ネグジット総研経営コンサルタント 久保 隆

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