薬局経営コンサルティング
「真に重要なことは定量化になじまない」———— この言葉を聞いて、皆さんはどう感じるでしょうか?
むしろ、「目標は定量化すべきだ」「そうしないと曖昧になる」「KPIやKGIでのマネジメントは不可欠だ」といった意見の方が一般的かもしれません。
もしこの言葉が筆者自身の主張であれば、「何を言っているんだ!」とお叱りを受けることもあるでしょう。
しかし、この言葉はあのP.F.ドラッカーによるものです。『現代の経営』において、「目標による管理(Management by Objectives and Self-Control)」を提唱した彼はこう述べています。「測定と定量化に成功するほど、それらに注目してしまう。結果として、管理が行き届いているように見えるほど、実は見落としていることが多い危険がある。」
定量化の本質は「デジタル化」です。デジタルは明確さをもたらしますが、その反面、アナログ的な要素——つまり文脈や感情、意図など——が抜け落ちやすくなります。このため、「目標は達成したが、目的は果たせていない」という事態が起こるのです。
例えば、ある薬局チェーンでは「かかりつけ薬剤師指導料の算定件数」を数値目標として掲げたことで、実際に算定数や算定率は向上しました。しかし、その結果として「患者の薬物療法の推進」や「ADL・QOLの維持・向上」といった本来の目的に十分貢献できていないという事象が起こりました。現在注目が高まっている「マイナンバー保険証の利用促進」においてもその数値だけを追ってしまうと「薬剤の情報確認」がおろそかになっているという事例も少なくありません。
もちろん、これは「定量化が重要ではない」ということではありません。「定量化には限界がある」という認識が重要なのです。定量目標と定性目標は、どちらもバランスよく用いる必要があります。

目標設定を行う際には、「目的」と「目標」、さらに「定性目標」と「定量目標」の違いや特性を理解し、目的を実現するための適切な目標設定を意識することが大切です。こうした手間を惜しまず取り組まなければ、目標設定が形骸化し、かえって手間や混乱を招く結果になりかねません。
ぜひ皆さんの組織でも、目標設定に取り組む際にはこの視点を意識していただければと思います。
ネグジット総研では、管理者スキル研修「目標設定のポイント」企画しています。詳細は下記リンクをご参照ください。
管理者スキル研修「目標設定のポイント」
2025.05 株式会社ネグジット総研 経営コンサルタント 久保 隆