「目標による管理」はストーリーで考えよう!~形骸化を防ぎ、価値ある目標設定を実現するために~

薬局経営コンサルティング

 昨今、保険薬局において「目標による管理」を導入されている組織も多いでしょう。しかしながら、せっかく設定した目標が形骸化し、目先の成果だけを追う状態に陥っているケースもお見掛けします。そこで、今回は目標設定を作業的にならないようにするために
  目標設定を、顧客満足・収益拡大のストーリーでつなぐ視点
ついて紹介します。 


「目標による管理(Management by Objectives and Self-Control)」は、ドラッカーが提唱したマネジメント手法であり、単に上から与えられた目標を遂行するのではなく、自ら設定した目標に向かって自己統制しながら成果を出すための考え方です。ただ「何をするか」だけでなく、「なぜそれをするのか」という意図や意味を明確にすることで、仕事への納得感や自律性を高める仕組みでもあります。ところが現場では、期初の目標設定が“作業”に陥り、実質的な意味を持たないケースも少なくありません。

 こうした形骸化を防ぐ鍵は、目標を「ストーリー」で捉えることにあります。単なるToDoの羅列ではなく、自分の業務がどのように顧客価値や収益向上と結びついているのか、組織の経営理念や戦略とどのように連動しているのか――そうしたつながりを「見える化」することで、目標に連続性を与え、部分的ではなく本質的な成果の創出への意識を高めることができるのです。


 ストーリーで考えるというのは、業務の“点”を“線”にし、さらに“面”として捉える思考です。例えば、「かかりつけ薬剤師指導料の算定率アップ」という目標も、それが「患者の中間アウトカムの創出」につながるというストーリーの中に位置づけられなければ、意味がありません。「処方箋送信システムの推進」といった課題も「登録数」という目標だけを切り離して、結果としての「送信数」や「複数処方箋持参患者数の増加」につながっていなければ、それは単なる「作業目標」に終わってしまうのです。


 このストーリー構築のためのポイントは、目標の項目の中に
   それを達成した際に目的の達成もしくはそれに近づいているかを判断できる基準
が含ませることです。前述の例でも「かかりつけ薬剤師指導料の算定」の目的に近づいたかどうかは「中間アウトカムの創出」の達成の可否によって判断できるのです。

 目標とは、未来に向けた意思表示であり、実現したい世界の仮説です。だからこそ、つながりが必要です。組織全体が一つの大きなストーリーを共有し、その中で個々の目標が自律的に展開されるとき、「目標による管理」は単なる管理手法ではなく、組織を成長・進化させるための“対話の道具”になります。


 ぜひ、こうした視点での「目標による管理」の取り組みを考えてみてください。

 


2025.04 株式会社ネグジット総研 経営コンサルタント 久保 隆

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