「処方箋受付回数は8.8億枚超え、ただし1施設当たりは0.6ポイント減 に! ~最近の調剤医療費の動向 令和5年度版より~

薬局経営コンサルティング

 先日、『最近の調剤医療費の動向 令和5年度版』が発表されました。おおよそ半年遅れ目安で厚生労働省より調剤医療費の動向は発表されており、今回令和6年3月までの令和5年度の年間の数値も確定しました。そこで、この10年間の時系列の変化を見てきましょう。
  

 まず、処方箋受付枚数のトレンドです。(図1参照)
令和5年度(23年度)は、処方箋枚数も8.8億枚と新型コロナ前の水準(19年度)を上回り過去最高となっています。新型コロナ前は、微増傾向が続く中、19年度に対前年をわずかに下回ることとなり、それが新型コロナ感染で加速し、20年度に前年比90.8%と大きく減少させますが、22年度に反転をし、23年度には対新型コロナ前(19年度)105.3%となりました。23年度の増加は新型コロナの5類移行、季節性インフルエンザの流行の増加がその理由として考えられています。
 

 これに対し、1施設(店舗)当たりの処方箋受付枚数は違ったトレンドです。(図2)
18年度まで1300枚台での増減を隔年で繰り返しながら、19年度に1100枚台へ大きく減少をさせ、その後、1200枚台での増減を繰り返す形となっています。店舗の構成を14年度と23年度で比較すると、400枚以上1200枚未満の施設の構成比が39.7から44.3ポイントに増え、200枚未満が9.2から7.0ポイントに、2000枚以上が18.3から16.3ポイントに減少していることが確認できます。施設数が処方箋受付枚数以上に伸びていることおよび大型店舗数減少という1施設当たりの枚数「減の要因」と、零細店舗は減少という「増の要因」が綱引きをし、「減の要因」が上回った結果と言えるでしょう。
 

 この400枚以上1200枚未満の施設の構成比が伸びている背景として考えられるのが、ドラッグストアの併設店の増加です。
図3は日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)が発表したドラッグストアの調剤併設店で応需された調剤報酬額を調剤報酬総額に対する比率の推移を示したものです。これを見ると15年度9.1ポイントから23年度16.9ポイントと7.8ポイント増えていることがわかります。調剤併設店ですと1施設当たり処方箋枚数は1000枚前後の店舗が多いと考えられていますので、前述の内容を裏付けるものと言えるでしょう。
 


 こうしたマクロデータの時系列変化を踏まえることで、経営環境の大きな変化を見て取ることができます。このことが皆さんの店舗の経営にどのような構造的影響を与えるか一度考えてみることをお勧めします。その上で、自社の経営資源を鑑みながら、持続的成長を図るためにどのような戦略・方針を具体化していくことが重要です。

 こうした環境変化に対応した戦略・方針を策定し、その実践を遂行していくためには、その変化に応じた顧客(患者・地域)の価値提案のできるチーム(組織)づくりが求められます。


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2024.09 株式会社ネグジット総研 経営コンサルタント 久保 隆