遅まきながらですが、新年あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願い致しします。診療報酬改定も短冊が発信され、調剤報酬の枠組みが大きく変わる内容となっています。今後の答申、通知を踏まえてどのような対策を打っていくか、それを踏まえた戦略の見直しをどう進めていくかが、今後問われてくるでしょう。その際に踏まえておいていただきたいのが「ストック&フロー」という考え方です。KPI(重要達成度指標)やKGI(重要目標指標)を設定する際には特にこの2つの区別をすることが求められます。
ストックとは、「蓄積」を意味し中長期的に維持されるもので、フローは「流れ」を意味し期間限定的なものになります。具体的には表にあるように、ビジネスにおいては、「売上」や「費用」はフローとなり、「現預金」、「内部留保」といったものがストックです。会計に詳しい方には、損益計算書の項目がフローで、貸借対照表項目がストックと言えばイメージしやすいかもしれません。ただし、ストック&フローは会計上のものだけではありません。企業の「ブランドイメージ」や「悪評」、「従業員のモラル」や「疲労度」といった抽象度の高いものでもストックにあたるものがあります。
我々はつい、「売上」や「新規顧客数」といったフロー項目に目を奪われることがしばしばあります。(新型コロナの「新規感染者数」もフローにあたります。)しかしながら、フローは、あくまでも期間限定的なものです。これに対し、ストックはその名の通り蓄積するものなので、減少させるフローが増加させるフローを上回らない限り、減少しません。それゆえ、KPIやKGIの設定や戦略策定の際には、ストックの数値を考慮することが重要と言われています。※著名な環境科学者のドネラ・メドウズは1990年代に「(当時)の経済学が実用的ではないのは、ストックの数値を軽視しているからだ」と述べたそうです。あくまでも当時の経済学に対してですが・・・
ただし、その際に留意すべきことは、ストックを具体的に定義できているかです。例えば、「かかりつけ薬局度」を取り上げた際に、その中身をどうするかです。例えば、「かかりつけ薬剤師の同意患者数」を定義とした際には、確かにこれもストックの数値ではありますが、それをKPIとして活用することに意味があるでしょうか?このストックを増加させるフローは「新規同意取得患者数」とですが、その同意の取り方によっては質的意味はかなり変わりそうです。また減少させるフローは、「同意解消患者数」ですが、果たしてこの数値を正確に捉えることができるでしょうか?もし、「かかりつけ薬局度」をKPIに取り上げるのならば、「複数処方箋持参患者数」などをお勧めします。※これもその時点で増減を見るのは難しいですが、一定時点で測定し、その推移を見ることは可能です。
今回に加え、次回改定は、「患者のための薬局ビジョン」で節目とされた2025年前の最後の改定になります。これらを睨んで持続可能な経営を目指した戦略検討をされる際には、このストックを留意したKPI、KGI設定を心掛けられることをお勧めをします。
2022.01 株式会社ネグジット総研経営コンサルタント 久保 隆