5月に入り、令和4年度調剤報酬改定の対応も一段落をされた頃でしょうか?今回の改定は、『患者のための薬局ビジョン』で示された節目の年である2025年を睨んで、「薬局薬剤師の対物中心から対人中心への転換の推進」が図られ、「調剤報酬の構造的転換」がなされました。これを踏まえた経営方針を推進する上で、ますます重要視されるのが人事評価制度です。そこで、今回は、人事評価制度の策定や見直しを検討する際に押さえておきたい「人事評価の目的」について取り上げます。
評価制度の目的は・経営方針の推進・人材育成・組織の活性化・適切な経済処遇への反映であり、この順番が重要です。
評価というと「経済処遇のため」と考えている人も少なくないのですが、これを一義的な目的として位置づけると人事評価がうまく機能しなくなることが散見されます。その理由を見ていきましょう。
●評価は管理者の日常的な業務
「処遇反映」を評価制度の一義的な目的と捉えてしまうことによる一番の弊害は、評価を「半年に1回程度行う業務」と評価者である管理者が認識してしまいやすいことです。少なくない管理者が評価を「賞与時期に管理部門から送られてくる評価シートにチェックをする半年に1回取り組む業務」と思い、日常的にはほとんど意識していません。これは大きな間違いです。人事評価のより上位の目的は「経営方針の推進」であり、そのための「人材育成・組織の活性化」です。これは管理者の重要な役割であり、日々その遂行を図った上で、そのまとめを半年に1回棚卸のように実施するのが「評価シートの記入」です。この順番を間違うと本末転倒になります。
●処遇反映目的だけだと粗探しになりやすい
「処遇反映」を一義的な目的にする二つ目の弊害は、そのことにより「部下間に差をつけることに意識がいきやすい」ことです。そうなるとついつい粗探し・欠点探しに陥りやすくなります。評価制度を通じて我々が実現したいことは、「差をつける」ことではありません。「経営方針の実現」そのための「人材育成・組織の活性化」です。「処遇反映」このことを持続的に進められる状態をつくり出すために求められるので、そのように機能している「処遇反映」が適切な「経済処遇への反映」になります。
●迷った際は、上位の目的の達成に繋がるように判断する
また、評価をする際には、評価基準のどのランクにつけるかを迷うケースが少なからず生じます。その場合、目的の上位項目が判断基準です。どちらに評価したほうが「経営方針の推進」につながるのか、「人材育成・組織の活性化」につながるのか、それを判断基準にして評価していくことで、その推進を図ります。人事評価の「評価」は、「査定」ではなく、PDCAサイクルの「評価」、「検証」に近い意味なのです。
いかがでしょうか。皆さんの会社・組織で人事評価制度の策定・見直しを検討されているところがありましたら、その「目的が明確になっているか」「処遇反映が一義的になっていないか?」を問いかけてみることをお勧めします。
2022.05 株式会社ネグジット総研経営コンサルタント 久保 隆