2015年度-2024年度 処方箋単価トレンド
~技術料単価16.2%増も薬剤単価▲7.4%
&薬価差40.9%減~
(薬局経営コンサルティングブログ)

処方箋単価減少、薬価差縮小、高コスト化の中で生産性の向上が不可欠

前回に続き、9月に厚生労働省より発表された『最近の調剤医療費(電算処理分)の動向~令和6年度版~』のデータを見てまいります。
今回は、1枚当たりの処方箋単価についてです。  

2024年度の処方箋単価を2015年度と比較しますと、9,546円から9,372円へと174円(▲1.8%)減少しています。処方箋単価は薬局経営における収益の基盤であり、この減少傾向は単なる数値上の微減にとどまらず、経営構造の変化を反映していると考えられます。  


内訳を見ますと、技術料単価が2,232円から2,594円へ362円(+16.2%)増加している一方で、薬剤料単価は7,299円から6,760円へ539円(▲7.4%)減少しています。
技術料の増加は、調剤基本料が651円から857円へと206円増加したことが大きく寄与しています。なお、薬学管理料は842円と大幅に増加していますが、これは令和4年度改定により「調剤料」「薬歴管理指導料」が「薬剤調整料」「調剤管理料」「服薬管理指導料」などへと再編された結果であり、単純な比較はできません。
この動きは、『患者のための薬局ビジョン』の実現を目指し、地域支援体制加算・連携強化加算・DX推進体制加算等の強化・新設が進められたことによるものです。ただし、その伸び幅は薬剤料の減少を補い切れていないのが現状です。  
 

一方で、注目すべきは薬価差(平均乖離率)の縮小です。中医協薬価専門部会の資料によれば、平均乖離率は10年前の8.8%から2024年度には5.2%へと約4割減少しています。薬価差は、これまで薬局の営業利益を支えてきた構造的要素の一つでしたが、その縮小は薬局経営の利益構造を根本から変えるものです。特に薬価の毎年改定の導入により、実勢価格との乖離を最小化する方向へ政策誘導が進んでいることが背景にあります。そのため、薬価差による収益確保という従来型モデルは、もはや成立しにくくなっています。

 

さらに、経済環境の変化として、物価上昇や人件費の増加への対応が避けられない状況です。政府は医療・介護分野にも賃上げを求めており、薬局も例外ではありません。また、前述の各種加算の算定に伴い、システム導入や設備投資などによる経費増加、さらには業務の複雑化・高度化が進み、高コスト体質に陥りやすくなっています。   

 

このように、処方箋単価の減少、薬価差の縮小、高コスト化の進行という三重の圧力の中で、薬局経営においては生産性の向上が不可欠となっています。業務効率化と付加価値創出を両立させる経営モデルへの転換が求められます。具体的には、非薬剤師へのタスクシフティング、調剤ロボットやAI薬歴の導入などによる調剤業務の効率化と、患者アウトカムを創出する対人業務の強化が重要です。

これらのデータと視点を踏まえ、今後の自社・自店の戦略方向性を検討されることをお勧めいたします。 
 

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2025.10 株式会社ネグジット総研 経営コンサルタント 久保 隆