1施設当たり処方箋枚数の推移~減少傾向に歯止め?!~
9月上旬に厚生労働省より『最近調剤医療費(電算処理分)の動向~令和6年度版~』が発表されました。それを踏まえ、1施設(店舗)当たりの処方箋枚数の推移を分析しました。

1店舗当たりの処方箋枚数は、中長期的には減少傾向を示してきました。しかし直近の24年度においては、その流れに一部変化が見られ、前年比では微増へと転じています。10年間のデータによれば、24年3月時点の処方箋枚数は10年前に比べ94.9%と依然として減少傾向を示すものの、直近1年では前年比101.8%と回復の兆しが確認されました。
このような動きを、店舗規模別の処方箋枚数構成比からより詳細にみていきましょう。10年前と比較すると、200枚以上1200枚未満の階層に属する店舗の割合が増加し、特に400枚以上600枚未満の店舗が128.6%と大きく伸びています。これに対し、200枚未満の小規模店舗および2000枚以上の大規模店舗はシェアを落としており、とりわけ200枚未満の店舗は10年前比で76.6%と顕著に減少しました。つまり、極端に小規模あるいは大規模な店舗の比率が低下し、中規模店舗にボリュームゾーンがシフトしていることがわかります。
これらの背景には、大きく二つの要因があると考えられます。第一に、ドラッグチェーンにおける調剤併設型店舗の増加です。これらの店舗は700~1000枚前後の処方箋を扱うケースが多く、結果として1店舗当たり処方箋枚数の減少や中規模帯の店舗数増加に寄与していると推測されます。関連データとして、調剤報酬額総額に占める調剤併設型ドラッグ店舗のシェアが過去10年間でほぼ倍増している事実が挙げられます。
第二に、調剤専門チェーンにおける小規模店舗の閉局が進んでいる点です。生産性向上を目的としたスクラップ&ビルドの動きにより、全体として1店舗当たりの平均処方箋枚数を押し上げる効果をもたらしています。
このような構造的変化を踏まえると、御社が今後の店舗戦略を検討する上でもいくつかの示唆が得られます。第一に、小規模店舗の持続性は非常に難しくなっており、一定の判断が求められる状況にあります。第二に、中規模ゾーンが厚みを増していることは競合環境の激化を意味するため、選ばれる薬局となるために患者・顧客の組織化や、AI薬歴・オンライン服薬指導などの工夫による生産性向上が不可欠と考えられます。第三に、ドラッグストア併設型の存在感拡大は今後も続く可能性が高く、自社・自店の差別化戦略や地域に根差した機能強化の方向性を検討する必要があります。
これらのデータや視点を念頭に置いた上で、今後の出店戦略やサービス強化の方向性を戦略的に描いていくことを強くお勧めします。
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2025.09 株式会社ネグジット総研 経営コンサルタント 久保 隆