はじめに
本記事では、「令和6年度(2024年度)調剤報酬改定」に関する内容を主な改定項目別に整理し、各テーマの背景や議論の経緯、最新の対応内容を分かりやすくまとめています。
定期的に最新情報を追記していく更新型のまとめ記事として、制度対応や現場での運用検討にご活用ください。
<注意点>
本記事は事実情報を中心に掲載していますが、一部筆者の見解が盛り込まれています。また、閲覧者様の記事閲覧時に最新でない情報が掲載されていることも考えられます。記載内容によって被った損害・損失については一切の責任を負いかねますので、各々にて最新情報および掲載元の情報をご確認ください。
関連YouTube 【最新動画:2025年9月1日公開(左側)】
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令和8年度診療報酬改定スケジュール ※最新投稿 2025年4月9日
改定議論は例年通りのスケジュールで12月中に意見集約へ(2025年4月9日発表)
4月の最初の中央社会保険医療協議会(以下、中医協総会)にて、令和8年度(2026年度)の診療報酬改定に向けた議論がスタートしています。
まずは今後の検討スケジュールについて議論が進められ、次の通り概ね例年通りのスケジュールで進めていくことで確認をしたようです。
<主な検討スケジュール>
- 2025年4月 キックオフ
- 同7~9月 第1ラウンド
- 同10月~12月 第2ラウンド
- 同12月末 とりまとめ・総会報告

改定の施行時期については明らかではないが、6月改定か?!
検討のスケジュールの議論がなされたものの、注意が必要です。
施行時期に関する言及はなく、前回の2024年度診療報酬改定と同様に施行時期が6月に後ろ倒しとなるかどうかは明らかになっていません。
おそらく、前回改定時の状況から変化は無いため、2026年度も同様のスケジュールで進められると予想しています。
詳細については、前回改定のスケジュール表を参考として挙げておきます。

中医協 総会(第551回)「総-3 医療DXについて (その2 )(https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001129862.pdf)」より抜粋・加工
<関連会議情報>
★2025年04月09日 令和8年度診療報酬改定、薬価改定の議論の進め方について 他 |中央社会保険医療協議会 総会(第606回)
改定率(予算編成)関連 ※最新投稿 2025年9月7日
「改定率」とは、薬局に支払われる「調剤報酬」を含む、診療報酬全体の改定の方向と幅を示す割合です。そして具体的には、次期改定において、医療機関や薬局に支払われる診療報酬(調剤報酬含む)が、全体として前回から何%増減するかを表します。
この数字は、薬局経営に直接的な影響を与えるため、薬局関係者にとって最も注意すべきポイントの一つと言えるでしょう。 この「改定率」は、中央社会保険保険医療協議会(中医協)での個別点数の議論に先立ち、政府の予算編成過程において、財務大臣と厚生労働大臣の「大臣折衝」を経て決定されます。
発表される時期は、通常、次期改定の前年12月末が通例です。この大臣折衝で大枠の改定率(全体の予算増減のパーセンテージ)が最終的に決まるため、年末のニュースは特に注意深くチェックする必要があります。
単なる増減率だけではない!注視すべき改定率の内訳と制度改革
近年では、この予算増減のパーセンテージの記載に加えて、改定率の内訳や具体的な制度改革事項が同時に言及される傾向にあります。
例えば、2024年度改定の際には、単なる改定率だけでなく、「賃上げに資する措置分」「選定療養の仕組みを導入」といった、国民負担や医療提供体制に大きな影響を与える重要な制度改革のポイントが盛り込まれて発表されました。
このように、単に「何%プラス(マイナス)になったか」だけでなく、「その内訳として何に重点を置くのか」「どのような制度改革を同時に進めるのか」といった点が、中医協での議論とは別に、政府の強い意向として盛り込まれていることを理解し、読み解くことが、今後の経営戦略を立てる上で非常に重要です。
政治情勢が改定率に与える影響 ※2025年9月7日追記
2025年参議院選挙 自民党大敗 少数与党へ ※2025年7月20日
改定率を決定する予算編成は、当然ながら政権与党の政策にも大きく影響を受けます。
先日、7月20日投開票の2025年夏の参議院選挙では、自民党が大敗し、国民民主党や参政党が大きく議席を伸ばす結果となりました。このような大幅な勢力図の変化は、今後の医療政策や予算配分にも確実に影響を及ぼすことが予想されます。
国民の医療に対するニーズや、各党が掲げる政策が、次期診療報酬改定の議論にどのように反映されるのか、これまで以上に政治政治の動向を注視する必要があるでしょう。

石破首相 辞任意向表明 ※2025年9月7日
9月7日に石破首相が辞任意向を表明したことで、新政権が発足が確実な状況になりました。これにより、これまで先送りされてきた社会保障の重要課題は大きな転換点を迎え、議論は仕切り直しとなる見込みです。
その筆頭が、高額療養費制度の見直しです。この議論では、患者が医療費の負担額を事前に見通せる安心感と、制度を支える財源の確保をどう両立させるかが大きな焦点となります。所得に応じた負担区分の設定や年間の上限額、難病患者への配慮など、技術的な論点が山積しており、合意形成には時間がかかると見られます。

もう一つの焦点が、参院選でも注目された社会保険料の引き下げです。これは、国民の可処分所得を増やす家計支援と、保険財政の安定という、相反する要求に応えなければならない難しい課題です。単に料率を下げるだけでなく、公費投入の拡充や給付の重点化などを組み合わせた、総合的な政策設計が不可欠となります。
これら二つの重要課題の行方は、年末に控える診療報酬改定議論や来年度の予算編成に直結します。新政権がどのような方針を打ち出し、財源をどう確保するのか、今後の政治の動向から目が離せません。
財務省春建議のポイント ※2025年5月27日発表
予算編成過程では、財政制度等審議会(財政審)による建議が重要な指針となります。2025年5月27日に、2025年度予算編成に向けた春の建議(以下、2025春建議)が発表されました。
調剤報酬に関しては、特に以下の2点が重点的に言及されています。
- 対人業務を重点的に評価する報酬体系への一層のシフト
- 薬局の経営状況を踏まえた更なる調剤基本料等の適正化
特に、「かかりつけ薬剤師指導料」や「服用薬剤調整支援料」など、対人業務にかかわる点数の評価強化が求められています。
詳細については、以下ブログ記事にて紹介しています。ご覧ください。
改定基本方針(社会保障審議会) ※最新投稿 2025年8月28日
改定基本方針は、改定の方向性や重点項目を示す重要な指針です。社会保障審議会の医療保険部会と医療部会のそれぞれ議論され、最終決定した基本方針をもとに、中央社会保険医療協議会にて個別改定項目案に落とし込みます。
基本方針についての議論は通常、次期改定の前年8月頃よりスタートし、12月上旬に最終案が取りまとめられ決定される見込みです。詳細が発表され次第、本項にて情報を随時更新して公開します。
議論のスケジュール ※2025年8月28日発表
8月28日の社会保障審議会・医療保険部会にて、基本方針策定に向けた議論のスケジュールイメージが発表されました。
前回の令和6年度改定と概ね変化はないスケジュールの見込みとなっています。

個別改定項目(中央社会保険医療協議会) ※最新投稿 2025年9月10日
中央社会保険医療協議会(以下、中医協)では、具体的な診療報酬点数や算定要件の変更内容を検討し、最終的に厚生労働大臣に個別改定項目の案として答申します。
検討スケジュールは、改定年の1月中に点数が記載されていない変更案(いわゆる短冊と呼ばれる、具体的な点数がまだ記載されていない資料)が発表され、2月中に点数が記載された最終案が取りまとめられるのが通常です。
本項では、中医協における議論を診療報酬の点数項目ごとに順次更新して公開します。
令和6年度診療報酬改定の結果検証に係る特別調査(令和7年度調査) ※2025年7月9日発表
2025年7月9日の中医協総会で、次期改定の議論の土台となる「令和6年度診療報酬改定の結果検証に係る特別調査(令和7年度調査)」の調査票が公表されています。
<会議情報はこちらから>
調査は8月中に実施され、結果の公開は11月中旬とされています。この調査票の「問い」の内容から、国が改定結果の何を検証しようとしているのかを読み解くことができ、次期改定の論点について仮説を立てることが可能になります。詳細ついては、以下ブログ記事にて解説しています。ご覧ください。
在宅について(その1) ※2025年8月27日発表
2025年8月27日の中医協総会で、個別改定項目についての議論がスタートしています。当日には「在宅」をテーマに広く議論が行われています。
<会議情報はこちらから>
調剤における課題は次の通り示されています。
(訪問薬剤管理指導における取組等について)
- 地域包括ケアシステム(在宅医療)における薬局・薬剤師の役割についての議論は進展しており、第8次医療計画においても、訪問薬剤管理指導については「高度な薬学管理等を充実させ、多様な病態の患者への対応やターミナルケアへの参画等を推進するため、麻薬調剤や無菌製剤処理、小児への訪問薬剤管理指導、24時間対応が可能な薬局の整備が必要」とされている。
- 薬局全体の約40%が在宅薬学総合体制加算を届出しており、訪問薬剤管理指導を行う薬局及びその実施件数は年々増加している。訪問先の単一建物あたりの診療患者は10人以上である割合が高い。
- 在宅薬学総合体制加算2を算定している薬局は、勤務している薬剤師数が多い傾向にあった。
- 在宅患者訪問薬剤管理指導の処方箋1枚あたりにかかる医療費のうち、技術料は平均で6,492円で
あった。- 訪問薬剤管理指導を行う薬局のうち、近隣の薬局と連携している場合を含め、約9割の薬局で夜間休日対応が可能な体制を整えている。夜間休日対応での業務内容は「調剤(麻薬を除く)」、「在宅患者からの問い合わせや不安に電話で対応」が多かった。
- 訪問薬剤管理指導を行っている薬局のうち約12%の薬局が在宅移行初期業務を行っていた。在宅移行初期管理料を算定できない理由としては「対象患者の要件が満たせないため」が最も多かった。また、在宅移行初期業務の対象患者としては、「認知症」、「独居の高齢者」が多かった。
- 麻薬調剤に関し、調査期間において約3割の薬局で実績があり、1か月間の件数は10件以下である薬局が大半であった。
- 自薬局における無菌調剤実績は、在宅薬学総合体制加算2を算定している薬局においては27.3%で調剤実績があった。
※2025年8月27日中央社会保険医療協議会総会「総-2在宅について(その1)」より抜粋
調剤について(その1) ※2025年9月10日発表
2025年9月10日の中医協総会で、調剤をテーマにした個別改定項目についての議論の第1回が実施されました。
<会議情報はこちらから>
調剤についての現状を整理した上で、次の論点が示されています。
<調剤についての現状(論点)>
○ 現状を踏まえ、地域の医薬品供給拠点の役割を一層充実させる観点から、調剤技術料(調剤基本料、地域支援体制加算、後発医薬品調剤体制加算等)における評価について、どのように考えるか。
○ 現状を踏まえ、薬剤師の対人業務を拡充させる観点から、薬学管理料(調剤管理料、かかりつけ薬剤師指導料等)における評価について、どのように考えるか。※2025年9月10日中央社会保険医療協議会総会「総-2調剤について(その1)」より抜粋