4月に入り新年度もスタートしました。「患者のための薬局ビジョン」で提起された節目の年である2025年まであと2年となり、「対物業務から対人業務」の流れや薬局DXの取り組みなど薬局業務のあり方の変化・革新が一層求められています。今回はこうした変化の実現に取り組む際に留意すべき視点についてお伝えします。
先日ある薬局で「非薬剤師の業務を見直したい」と考えているが、その旨を現場に伝えると多くの反発があり、なかなか前に進められないとのお話を耳にしました。こうした反発がなくても、業務の見直しをすることを確認・決定しても実践に至らない場合や、一時的な取り組みで終わってしまうケースもしばしば見受けられます。
こうしたことが生じる背景には危機感を訴えるだけで取り組んでしまったことが考えられます。対人業務が求められることによる「0402通知」やオンライン資格確認・電子処方箋等の流れから、「このままではあなた方の仕事はなくなる」的な発信です。もちろん、事実を共有することは不可欠ですが危機感をあおるだけでは、表立った反発は防げるかもしれませんが、不安や不満が内面に残ってしまい、そのことが面従腹背的な構造を生み出してしまっています。
それを避けるには、危機感をあおるだけではなく、変化に取り組める組織風土の醸成が重要です。そのためにはそうした取り組みを当社で取り組む意義についての「共通の価値観」、それを我々の会社・薬局で実現できるという「自信と信頼関係」、そのことへの「感謝心」、加えて更なる「高い欲求水準」、そのことが次のステップへの「危機感」の醸成となる好循環を創っていくことが必要となります。こうした構造により持続的な変化に取り組める組織へ成長できるのです。
こうした構造を作るための第一歩として変化を起こす際には、「プレジャー・ペインマトリクス」(図)の視点で、どのような働きかけをするか検討することをお勧めしています。
このプレジャー・ペインマトリクスを作るにはまずその変化に関する利害関係者を洗い出し、その関係者ごとに
①変化することで生じるメリット
②変化することによるデメリット
③変化しないでいることのメリット
④変化しないでいることのデメリット
を書き出します。
お気づきだと思いますが、「危機感を煽ること」はこの④に焦点が当たっており、これだけだとプレッシャーを与えるのみになりがちです。したがって、これに加えて①を明確にすることや、②③を小さくすることができないかを考え、それを組織の「共通の価値観」とすることで、組織の変化を持続させる土台となります。
改善や革新がなかなかスタートできなかったり、定着に悩んでいる関与先がありましたら、ぜひ、この視点を紹介してみてください。
2023.04 株式会社ネグジット総研 経営コンサルタント 久保 隆