はじめに
調剤に関連する行政動向の中で、注目度の高いテーマを解説するシリーズ「クローズアップ調剤行政」をお届けしています。
本記事シリーズでは、
- 厚生労働省・内閣府・財務省より発表される会議資料
- 通知、事務連絡等の発表資料
を中心に調剤に関連する内容をピックアップ・解説します。
毎月継続的にご覧いただければ、調剤に関する行政動向をおおよそ把握できるようなコンテンツを目指します。ぜひ継続してご覧いただければ幸いです。
尚、各種記事に関するご質問等、個別のご相談は薬局経営者研究会の会員企業様に限り無料で承っております。興味がある方はぜひご入会を検討ください。
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2023年2月実施の会議・通知情報
2023年2月に実施された主な会議・発出された通知等の情報は次の通りです。
厚生労働省
- 2023年02月15日 医薬品の安定供給について|第9回 医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会
- 2023年02月22日 処方箋医薬品以外の医療用医薬品の販売について(零売関連)|第1回医薬品の販売制度に関する検討会
- 2023年02月24日 「マイナンバーカードと健康保険証の一体化に関する検討会」中間とりまとめ 他|第163回社会保障審議会医療保険部会
- 2023年02月24日 第8次医療計画等に関する検討会(報告) 他|第96回社会保障審議会医療部会
- 2023年02月27日 基本指針について 他|第106回社会保障審議会介護保険部会
- 2023年02月27日 電子処方箋の導入状況等について|第1回電子処方箋推進協議会
内閣府
財務省
2023年2月で気になる行政動向
2023年2月には、今後薬局に大きく影響するテーマを多数取り上げられるであろう、次の会議体の初会合がございました。
- 医薬品販売制度に関する検討会
- 電子処方箋推進協議会
電子処方箋については、前月の記事で取り上げましたので、本記事では「医薬品販売制度に関する検討会」の中で取り上げられたテーマ、「処方箋医薬品以外の医療用医薬品の販売(以下、「零売」という)」に関する議論を踏まえ、ポイント解説いたします。
ぜひ最後までご覧ください。
(以下、画像をクリックすると新しいタブで拡大表示されます。)
新検討会にて「零売」に関する議論がスタート
新検討会「医薬品の販売制度に関する検討会」はどのような会合?
2月22日に「医薬品の販売制度に関する検討会」の初会合が実施されました。この検討会で取り上げられるテーマは、会議名そのままで「医薬品販売制度」の制度見直しに向けた論点を整理する目的で立ち上げられた会議体です。(図1)
これまでの医薬品販売制度の多くは、「対面」をベースに制度設計されています。
昨今は情報通信技術の進化や、新型コロナによりオンラインの普及等の社会活動の変化が顕著であるのは皆様もご存じの通りです。
そのような環境変化により制度上の問題が生じてきている現状を踏まえて、本検討会で「医薬品販売制度」の問題について議論されることになっています。
検討会のスケジュールと第1回テーマ
本会議は、2月~7月で全6回を予定され、第1回目は「処方箋医薬品以外の医療用医薬品の販売について」が取り上げられています。(図2)
このテーマはいわゆる「零売」のあり方について議論で、会議では参考人として招かれた日本零売薬局協会 理事長の小瀨文彰氏より「零売に関する基本知識/日本零売薬局協会の取り組み」として零売の現状について説明されています。
「零売」のキホン
「零売」ってなに?
薬局にお勤めされている方であれば、少なからず「零売」という単語は聞いたことがあるかと思いますが、それ以外の一般の方であれば認知度は低いのではと思います。
そもそも「零売」とは、元々は薬に関わらず、モノを少量に小分けにして販売することを指す言葉であったようです。
現在は、処方箋医薬品以外の医療用医薬品を処方箋無しに販売することを「零売」と呼ばれています。(図3)
「零売」はあくまでも例外的な位置付けだが「零売特化型」の薬局も・・・
一般の方の多くは、病院のお薬は処方箋がないと手に入れることができないと思っているでしょう。
しかし、認められた一部の医療用医薬品においては一定のルールの元で販売することが認められています。(図4)
ただし、あくまでも例外扱いです。要指導薬品や一般用医薬品の販売を考慮したにもかかわらず、それが難しくやむを得ないケースに限り「零売」をすることが可能とされています。
個人的には、最近はSNS等を見ていると「零売」に取り組む薬局の方の投稿を見る機会が増え、取り組む薬局が増えつつあるのかなという印象を持っています。
確かに利用者視点では「零売」は、
- 病院に行く手間が減る
- 診療分の金銭的負担が減る(調剤分の負担は増)
といったメリットがあり一定のニーズがあると考えられます。
そういった背景もあり、「零売」を積極的に取り組もうとされる薬局が増えるのもわかります。
零売で何が問題になっている?
前述の通り、「零売」はあくまでも例外扱いです。病院の薬が医師の診察の上、処方箋が発行されてから初めて医薬品を購入できる制度になっているのは、安全に利用いただく為にあります。
例外的な「零売」であっても薬を安全に利用いただくために、一定のルールが定められているわけですが、ルールを守られていない不適切な事例が散見されています。そういった状況を受け、厚生労働省より令和4年8月に零売に関する販売方法等の再周知の通知が出されています。(図5)
再周知通知に書かれていること
再周知通知には、零売に関する基本的な「考え方」や、薬局側で守るべき「遵守事項」、案内等の「不適切な表現」が整理されています。
詳細は、原文をご覧いただければと思いますが、「不適切な表現」には、次の表現が例示されています。
・「処方箋がなくても買える」
・「病院や診療所に行かなくても買える」
・「忙しくて時間がないため病院に行けない人へ」
・「時間の節約になる」
・「医療用医薬品をいつでも購入できる」
・「病院にかかるより値段が安くて済む」
これらの表現は、インターネット検索で「零売薬局」等を調べてみれば、零売を強く押し出している薬局のHPに当たり前のように出てきます。
再周知の通知があっても、ルールを守られていない一部の薬局がいる状況でどのように改善をすすめていくかが今後の課題となるでしょう。
今後の「零売」はどうなるか?
会議に関する報道では、参加者からは「零売」に関する批判が集中し、緩和を求める声がほぼなかったとありました。
(参考記事)PharmacyNewsBreak 2023年2月22日記事
不適切「零売」に批判集中、規制強化求める声相次ぐ 「将来的には零売専門なくなる」同調する零売協会
https://pnb.jiho.jp/article/228244
そういった批判的な状況を見ると、少なからず「零売」は規制の方向に進む可能性が高いと予想されます。
特に、これまでの通知上でルールを明示してきた形では、強制力が弱い状況にあるのは否めません。
より強制力の伴う法令等により、「零売」をより限定的なものにしていく形にシフトするのではないかと考えられます。
これまで「零売」を強みとされていた薬局は方向転換を余儀なくされるかもしれません。
おわりに
2023年2月に発表された調剤関連の行政動向について、特に知っていただきたいポイントとして「零売」を取り上げました。
今回の記事は以上です。次回は3月の行政動向解説記事を予定しています。ぜひご覧ください。
(作成:株式会社ネグジット総研 経営コンサルタント 津留隆幸)
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