先日ある大手チェーンの幹部と現場の管理者に、かかりつけ薬剤師の取り組みにつてヒアリングをする機会がありました。その話を組織開発の経営コンサルタントのダニエル・キムが提唱した「組織の成功循環モデル」を活用して整理してみました(図参照)ので、今回紹介します。
「組織の成功循環モデル」は、継続的に成果(≒結果)を出そうとするならば、「その組織の『関係性の質』や『思考の質』がベースにあり、そられに働きかけることにより『行動の質』が変わり、続いて『結果の質』が変わり、それが更に「関係の質」に好影響を与え向上していくという構造を作る」という考え方です。この構造をかかりつけ薬剤師の取り組みに当てはめてみました。
まずは「薬局」の場面になります。最初に「関係の質」としてかかりつけ薬剤師といった「新しい」取り組みを取り組める関係性や不可逆性を高めるためにシステムや機器といったハード面の環境などのベース項目が構築できているかです。次いで「かかりつけ薬剤師を取り組む意義」「顧客(≒患者)にとってどのような価値があるものか」といった「思考の質」が個人の価値観ではなくチームの価値観をとして共有されていることが求められます。そして、ツール・トークなどを活用しながら、患者や医療機関等への働きかけが「行動の質」となってくるのです。
次に、「医療機関」との関係になります。「医療機関」とも当然のことながら、ベースとして日ごろからの「関係の質」と高めることが求められるのです。これも日常的といえるかもしれませんが、ドクターの処方方針などその考え方の基本など「思考の質」を理解しておく必要があります。そうすることにより、「疑義照会」「処方提案」「トレーシングレポートの提供」などの「行動の質」が価値のあるものとなり、「結果の質」として「処方変更」「残薬調整」などが獲得できるのです。
加えて、「患者」とのかかわりになります。こちらも日ごろからの「関係の質」がベースとなり、「健康寿命の延伸」を最終ゴールとした「一元的・継続的把握」の必要性などの啓発による「思考の質」の向上を図るのです。それらをもとに「真の意味でのアドヒアランス」や「中間介入」などの「行動の質」を実施し、重複投薬や不適切な多剤投与の削減、プレアボイド等のアウトカムの獲得、ひいてはQOL・ADLの維持向上といった「結果の質」を実現していきます。その結果、薬局にとっての「結果の質」である「同意の獲得」「指導料の算定」「処方の一元化」につながるのです。
課題の継続的な推進にはモノゴトを構造・システムとして見ていくことが重要となります。皆さんもこうした視点を持って活動を「成功循環」にしてみませんか?
2017.11 株式会社ネグジット総研経営コンサルタント 久保 隆